離婚協議書を公正証書にする意味と効力
離婚協議書を公正証書とすることには、どのような意味や効力があるのでしょうか? 主な意味や効力は、次のとおりです。
相手が約束を破った際の強制執行が容易となる
離婚協議書を公正証書とする最大のメリットは、仮に相手が約束を破って養育費などを滞納した際に、強制執行が容易になることです。強制執行とは、裁判所が支払い義務者の財産や給与債権などを差し押さえて、強制的に養育費などを取り立てる手続きです。強制執行をすることで、たとえ相手が支払う気をなくしていても、約束どおりに養育費などを受け取ることが可能となります。
しかし、離婚協議書を公正証書としていなければ、たとえ滞納が生じたとしてもすぐに強制執行を申し立てることができません。この場合には、強制の前に、合意がある場合は訴訟や支払督促、合意ができていない場合は調停や審判などを行い、相手に法的な支払い義務があることを明確にすることが必要です。その後、ようやく強制執行手続きが可能となります。
一方、離婚協議書を公正証書としておけば、万が一滞納が発生した場合、すぐに強制執行手続きを申し立てることが可能です。また、強制執行で給与などを差し押さえれば、給与の支払元である職場に裁判所から通知がされるため、自ずとトラブルが職場に知られることとなります。そのため、相手が職場にトラブルを知られたくないと考えることで、滞納の抑止力ともなるでしょう。
原本が公証役場に保管されるため、紛失の心配がない
離婚協議書を公正証書で作成した場合、手元には正式な写しである「正本」や「謄本」が交付されます。公正証書の原本は公証役場で保管されるため、万が一謄本などを紛失した場合であっても、再交付を受けることが可能です。
一方、公正証書としなかった場合の離婚協議書は、手元にある用紙自体が原本です。そのため、紛失などをしてしまうリスクが高いといえるでしょう。
離婚協議書を公正証書にする手順と流れ
離婚協議書を公正証書とする場合、その手順と主な流れは次のとおりです。
離婚条件の協議をまとめる
公証役場へ出向く前に、離婚条件についての協議をまとめておきましょう。公証役場は、あくまでもすでに決まった内容を公正証書化する役所です。たとえば、2人のあいだに入って意見を調整してくれたり、離婚協議の内容についてアドバイスをくれたりするわけではありませんので注意しましょう。当人同士で離婚条件がまとまらない場合には、公証役場へ行く前に、弁護士へ相談したほうがよいでしょう。
必要書類を準備する
離婚条件がまとまったら、必要書類を準備しましょう。必要となる書類は、たとえば次のものなどです。
1. 離婚に関する合意内容のメモ(箇条書きなどで構いません)
2. 離婚する当事者の戸籍謄本
3. 未成年の子どもがいる場合、子どもとの親子関係のわかる戸籍謄本(「2」の書類に子どもも載っていることが一般的です)
4. 本人それぞれの印鑑登録証明書または運転免許証などの本人確認書類
5. 財産分与の対象に不動産が含まれている場合には、その不動産の登記簿謄本と固定資産評価証明書
6. 年金分割をする場合には、年金分割情報通知書と基礎年金番号のわかる年金手帳
必要書類は公正証書に記載する内容などによって異なるため、こちらはあくまでも参考としてご覧いただき、相談先の公証役場にあらかじめ確認することをお勧めします。
公証役場に事前相談をして文案を作成してもらう
必要書類が揃ったら、これらの書類を持って、まずは公証役場へ事前相談に出向きましょう。公証役場は予約なしに出向くと、長時間待ったり、その日に公証人の空き時間がなく相談を受けられなかったりする可能性があります。そのため、あらかじめ電話で予約をしてから出向きましょう。相談時には、夫婦で合意した内容について公証人へ説明したり、必要書類を確認するなどします。事前相談のあと、公証人が文案を作成してくれます。
予約をする
公証人が作成した文案が意図した内容と異なっていなければ、本作成日の予約をしましょう。作成日には、原則として夫婦がともに公証役場へ出向く必要がありますので、双方の予定を確認のうえ予約してください。
予約当日に当事者が公証役場に出向く
予約当日に、夫婦がともに公証役場へ出向きます。この日の必要書類については公証人から予約時に説明があるかと思いますので、指示に従って持参してください。一般的には、本人確認に必要な運転免許証や印鑑証明書、実印などです。離婚公正証書が作成できたら、正式な写しである正本や謄本が交付されますので、大切に保管しましょう。
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