妻のためだったのに…
Aさん夫婦は、冬は都内のマンション、夏は軽井沢の別荘と、豊かなセカンドライフを送っていました。ところが、最初の1年半はよかったのですが、次第に妻の不満が募っていきます。
妻は、Aさんの退職後、Aさんの生活に振り回されることや、これまで以上にAさんと長い時間をともにすることについて、想像以上に心身の負担を感じていました。最初の夏は友人を招くなど楽しく過ごしたのですが、交通費がそれなりにかかるので、友人はそうそう来てはくれません。冬は都内で過ごすので、まだマシですが、夏に四六時中夫と一緒にいることに耐えられなくなったのです。
そこで決断したのが、Aさんとの離婚。妻の意思は固く、4年にわたり何度も話し合いを重ねましたが離婚の結論が覆るには至らず、2人は熟年離婚することになります。熟年離婚の件数は毎年増加しており、いまや誰にでも起こりうるリスクといえるでしょう。一般的に熟年離婚とは20年以上連れ添った夫婦が離婚することを指します。なお、2023年の厚生労働省の統計によれば、離婚件数は18万3,808件、そのうち熟年離婚は3万9,812件。つまり、離婚件数のうち約22%が熟年離婚ということになります。
不動産が財産分与の対象に…安易な選択が招いた悲劇
Aさんにはさらに「財産分与」という問題も発生します。財産分与とは、夫婦が結婚生活中に築いた財産を離婚時に公平にわけることです。具体的には、現金・不動産・株式など有価証券・自動車など、夫婦が共同で所有する財産や、どちらか一方の名義であっても夫婦の協力で得られた財産を分配します。
Aさんは、都内のマンションと別荘を所有しています。財産分与の期限が迫るなか、現金化しやすいマンションを売却することに。不動産会社によると、都内のマンションは約3,500万円で売却できるとのことでしたが、急な売却のため、安値で買い取ってもらうことに。一方、別荘は売却に時間がかかりそうだったため、Aさんは仕方なく別荘に住むことを決意しました。現金がほとんどなかったAさんは、マンションの売却代金を全額妻に渡すことで財産分与は完了しました。
