Gross Tax Gapが100兆円を突破
アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)のデータによると、確定申告期限までに正しい納税を行ったかを示すコンプライアンス率は約85%となっています。
しかし、IRSに納めるべき額と申告期限までに実際に納められた税金の差をあらわすGross Tax Gapは大きくなり、2021年に6,880億ドル(100兆円)に達しています。
ここで補足として、Tax GapにはNet Tax Gapと呼ばれるものもあることにも触れておきます。これはGross Tax Gapの金額からその後支払われた税金あるいはIRSが回収した税金額を差し引いた金額を指します。
2021年データでは、このGross Tax Gapの内訳はIRSに納めるべき発生した税金は全体で4,565兆ドル(670兆円)。申告期限までに支払われた税金は3,877兆ドルで、この差額が6880億ドルとなっています。
この内訳は申告期限までに申告されず、納税も行われていないとされる「Not Filing」が780億ドル(1兆1,000億円)、申告期限までに申告はされていますが、納税額は全額納税されず納税不足になっている「Under Reporting」が5,420億ドル(80兆円)、申告はされているが申告期限までに納税がまったく行われていない「Under Payment」が 680億ドル(10兆円)となっています。
IRSは未納分を回収していくわけですが、Gross Tax Gapは金額ベースで大きくなっているとしているものの、徴税を厳しく行うことによりNet Tax Gapを小さくするとしています。これはInflation Reduction Act(米国インフレ抑制法)によりIRSの予算が増大されたこと、また第三者による支払報告義務が厳しくなったことにより、徴税力は強化されています。
税務調査への透明化進むアメリカ
そして富裕層、大企業、暗号資産、オフシェア資産を中心に税務調査を進めています。
80年代より第三者による支払い報告義務が課せられました。いわゆる1099といったフォームで金融機関は利息、配当、株式売却額等の数字をIRSおよび納税者に報告するようになりました。
またチケット販売、ギグワーカー、暗号資産取引に関して、オンライン業者および暗号資産交換所はその売買金額をIRSおよび納税者に報告する義務が生じました。
今後、ますますIRSによる取引の透明化は進んでいくでしょう。日本はさらに厳しいのですが、アメリカでも脱税はさらに難しくなっていくと思います。
日本のように税収不足を増税によって解決する方法もたしかにありますが、IRSは第三者報告義務を強化することで、徴税漏れを徹底的になくすことが重要だと考えているようです。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾