前回は、「郊外」の賃貸マンション・アパートが抱える問題点について取り上げました。今回は、プロの専門家でも悩む「広大地評価」「時価評価」の判定について見ていきます。

否認されると過少申告加算税や延滞税が・・・

相続税の申告において、広大地判定及び時価評価は当初申告で行くべきか、更正請求で行うべきか、この議論は昔から(と言っても平成4年の国税庁事務連絡の後からですが)あります。永遠のテーマと言っても過言ではありません。ホントにホントの超弱気な(いや慎重な)税理士であれば当初申告などは愚の骨頂ですが。しかし、それでお客様のニーズに合っているのでしょうか。


現在の広大地は平成16年度の財産評価基本通達の改正において現行の評価方法になったのですが、対象地の交通接近条件、街路条件、環境条件、行政条件によっては、当初にこれを使うべきか否か今でも迷う方(税理士を含めて)が多いのが実情です。

 

また、土地の時価を評価するときに、通達による路線価評価ではなく鑑定評価を採用するときにもこれが論点になります。つまり、当初申告でこれらを採用した結果、課税庁からは厳しい調査が待っているという恐れと同時に、否認された場合に過少申告加算税や延滞税が課されるという余計な出費があるために、どうしても尻込みしてしまうことになります。

 

専門家責任を追及される昨今、仕方のないことでもあります。しかし、私は納税者にこれらのリスクを事前に説明して、理解を得られるならば積極的に採用すべきとの立場をとっています。なぜなら、明らかに広大地になる物件はいざ知らず、微妙な案件こそが専門家の腕の見せ所になるからです。それと更正請求といえども、このような微妙な案件は「絶対」に還付が認められるかどうかは分かりません。むしろ、当初で申告しなかったばかりに、余計な調査が待ち受ける可能性すらあります。

路線価評価方式で対応出来ない土地は山ほど存在

当社は平成16年以降、相続税申告のための鑑定評価を337件、広大地判定意見書を1,466件、添付資料として提出させて頂いています。この内、鑑定評価の是認率は約97%、広大地の是認率も約97%です。全て是認されたなどは口が裂けても言えませんが、今まで逃げたことは一度もないのが自慢です。(自慢にはならないか?)絶対に食い下がります。とことん戦います(別に好きで戦いをしていませんが)。納税者の方にご迷惑をかけた案件も「山ほど」いや「砂場」いや「スタバ」ほどあります(冗談が過ぎました)。


国税審判所まで行ったケースは両手の指では足りません。裁判まで行ったケースも数件あります。責任を取り鑑定料を返却した件も数件あります。なので、傷だらけの人生です。しかし、もちろんその件の追加費用など一銭も頂きません。つまり、自分が行った鑑定評価が適正・妥当であるという信念がそうさせています。

 

時価評価の世界は我々不動産鑑定士の範疇(本音は縄張りかな)だと今でも思っているのです。平成4年以降からこの業務にあたっており、累積2,000件以上の意見書の是認率は概ね97~98%程度です。そうでなければここで偉そうにこの文章を書くわけには行きません(世の中に絶対とか100%というのはありません、ウソになります)。

 

逆に言えば、是認可能性の高い案件を選ぶということにも繋がります。無謀に何でも突っ込んで討ち死にしていたのでは命がいくつあっても足りません。慎重に物事を進めることが如何に重要かです。もちろん時によっては目をつぶって突き進む勇気? も必要であることは言うまでもありません。

 

あえて言います。路線価評価方式ではとてもじゃないけど対応出来ない、無理な土地は世の中にはごまんとあることだけは確かです。

本連載は、株式会社アプレイザルの代表取締役・芳賀則人氏のブログ『芳賀則人の言いたい放題!』から抜粋、再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒https://t-ap.jp/blog/cat_blog/column/

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