前回は、地主の相続税対策において、賃貸物件の建築が危険といえる理由について説明しました。今回は、アパートよりも戸建てが有利になった事例を見ていきます。

当初は戸建て賃貸には否定的だったが・・・

2016年の1月頃に、相続アドバイザー協議会認定会員T氏より土地の有効活用についての相談を受けました。そのお客様は90歳を超えるお父様で、長女(50歳代)とその娘(孫)さんと同居しておられるとのこと。

 

都内にある50坪程度の土地に自宅用の古家が建っています。これを取り壊して賃貸アパートを建てたいとの希望です。お父様の老後(と言っても既に老後)の生活資金にするとの願いです。ご本人たちは夢を膨らませています。T氏は元々証券会社出身です。不動産の有効活用は経験がありません。商売柄、ハウスメーカー営業マンとの付き合いがあります。しかし不安です。それで、私にアドバイスを求めて来ました。

 

都市計画法上の用途地域は第1種低層住居専用地域、建蔽率50%・容積率100%です。道路付けは北側4m、西側4m道路、南側4m道路に一部面する3方路画地です。新宿から急行で10数分にある最寄り駅からの距離は400m(徒歩5分程度)で住環境も良く賃貸物件としてはいい条件です。アパート方式で行けばワンルーム(20~23㎡)が8戸可能です。構造は鉄骨が良いか木造が良いか、家族間でも議論がありました。

 

そこで、T氏が複数のハウスメーカーとの関係がある以上、私は競争見積もり方式を提案しました。T氏の付き合いのあるアパートハウスメーカー4社と1社だけ戸建て賃貸専門の会社に見積もりを依頼することにしました。T氏もご家族も初めは戸建て賃貸に否定的でした。何分2棟(1棟当たりの建物面積は70㎡、土地面積は80㎡位)しか出来ないのですから。家賃がそれほど取れないでしょ・・・。まあその通りですが。

表面利回りが高く、自己資金も抑えられる

ということで、各社を呼んで、間取りやデザイン等の設計と家賃査定をしてもらうことになりました(ここまでは無料でのプレゼンとなります。申し訳ないのですが)。

 

これをまとめたのが次の表です。

 

 

ちなみに土地の更地評価は当社の査定で約1億円と出しました。

 

T氏とご家族と私と打ち合わせの機会を設けました。この表を見た瞬間に同席していたご長男は(この方は他の家に住んでいるので直接は関与しない)E社の戸建て賃貸で決まりですねと・・・会社を経営していることもあり、なかなか鋭い視点をお持ちでした。

 

建築費の割に効率的な家賃が取れます。これを表しているのが表面利回りです。当然借金も少なくて済みます。木造アパート業者である建築費の一番安いA社と比較しても3,000万円以上少なくて済みます。自己資金をなるべく抑えたい一家にとっては嬉しい誤算です。

 

ご長女もこれに賛同されて、戸建て賃貸住宅に決めることになりました。当然のことですが、土地はお父様の名義です。いずれ迎えるであろう相続時にも1棟ずつ、兄妹で分割することも容易です。土地の有効活用として、一般の方にとって特に大切なのは、多額の債務(借金)を負わせないことと、分割のしやすさを重視すべきことであると考えます。

本連載は、株式会社アプレイザルの代表取締役・芳賀則人氏のブログ『芳賀則人の言いたい放題!』から抜粋、再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒https://t-ap.jp/blog/cat_blog/column/

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