65歳元会社員が老後破産の危機…「娘のため」と暴走
田中幸一さん(仮名)は65歳。中小企業で長年営業マンとして働いていました。8歳年下の妻と出会ったのは田中さんが44歳のときです。
ひとり娘が誕生したときには46歳になっていた田中さんは、「この年で父親になれるなんて。でも、年をとった父親だと娘が引け目を感じるかもしれない。そうならないよう、できるだけのことはやってあげよう」そんなことを考え、娘溺愛パパに変貌したのです。
その結果、娘にかけるお金には糸目をつけなくなりました。欲しいものは買い与え、教育にも熱を入れ中学校から私立へ。通学が楽なようにと駅近のマイホームも購入しました。
家計に余裕があれば問題はなかったのですが、実際はその逆でした。結婚当初は営業課長として年収700万円程度を受け取っていた田中さんですが、50代で役職定年となり、60歳以降の嘱託社員時には年収が350万円ほどになっていました。
一方、妻は週3日のパート勤務。田中さんの収入が下がっても勤務を増やすことはありませんでした。というのも、家計の手綱は夫である田中さんが握っており、妻は実態を把握していなかったからです。
そんな不安定な家計の中で娘にお金をかけ続けた結果、自分の老後資金を一切準備できないまま65歳に突入してしまったのでした。独身時代に貯めた貯金はとっくに枯渇し、60歳時で受け取った退職金もみるみる減っていくばかりです。
しかし、その事実を妻と娘に話すことはなかなかできません。甲斐性のない夫・父親だと思われたくないという妙なプライドがあったからです。
65歳になり受け取り始めた年金は月20万円程度(加給年金含む)、妻のパート代と合わせれば30万円程度です。しかし、住宅ローンの返済や家族の生活費、娘の学費やおこづかいでそのほとんどが消えてしまいました。
そうして数カ月がたち、いよいよ危機的な状態だと悟った田中さんは、妻に通帳を見せて状況を告白しました。
「すまない、このままでは生活していけそうもない……」
残高は100万円を切るほどになっていました。お金のことは夫に任せておけば安泰だと信じていた妻は、あまりのことにしばし呆然。
しかし、自分が家計に無関心すぎたことを反省し、夫には1日も早く再就職をするように言い、自分もパートを増やすために奔走。家を売ることも視野に入れ始めました。
娘にも事情を説明しましたが、そこそこ裕福だと思っていた自分の家の金銭的危機に「信じられない」「この先が怖い」と言うばかり。
娘のためと思ったことが、結果的に大きな不安を抱えさせることになり、田中さんは無計画なこれまでの行いを心底悔やむことになったのでした。
晩婚はライフイベントが一気に押し寄せる
この事例ほどではなくても、幼稚園から大学までずっと公立の場合で約1,000万円と言われるなど、教育資金には想像以上にお金がかかります。
そのうえ、子どもができた時に年を取っていれば、その分現役時代も短くなり、教育費や老後資金の準備、住宅ローンの返済と、さまざまな負担が短期間で押し寄せることになります。
「子どもの教育資金がかからなくなったら本格的に老後資金を貯める」というのも難しいでしょう。教育資金がかかるピークが過ぎたら年金暮らしになっているためです。
こうしたことから、自分の老後生活を守るため、そして子どもに迷惑をかけないためにも、貯蓄や節約の意識を普通以上に高める必要があるでしょう。
【参考】
厚生労働省「人口動態調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/doukou16_gaiyo.asp
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