(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●政権運営の中核をになうホワイトハウス事務局のトップが首席補佐官、同局には要職が集中する。

●首席補佐官や行政部門長官には選挙陣営のメンバーや、対中強硬派、関税強硬派などを指名。

●トランプ氏は前回の事態を踏まえ、親族の要職起用は見送りへ、市場は人事の安定性にも注目。

政権運営の中核をになうホワイトハウス事務局のトップが首席補佐官、同局には要職が集中する

米連邦政府は、「行政府」、「立法府」、「司法府」の3部門で構成されています。行政府は大統領を長とする行政組織であり、立法府は上下両院からなる連邦議会、司法府は連邦最高裁判所を頂点とする裁判所組織です。今回のレポートでは、はじめに3部門のうち、行政府の組織を解説し、次にトランプ氏が現時点でどのポストにどのような人物を指名しているかを確認していきます。

 

行政府において、大統領の直属組織が大統領府であり、そこで政権運営の中核をになうのがホワイトハウス事務局です(図表1)。同局のトップが大統領首席補佐官で、大統領側近のなかでも特に信頼関係が深い友人や大物が務めることが多く、実質的なナンバー2と呼ばれる政権の要です。ほかにも次席補佐官や、国家安全保障問題の担当補佐官などが所属し、大統領上級顧問や大統領報道官などとともに、大統領の助言役となります。

 

[図表1]米国の行政府の組織

首席補佐官や行政部門長官には選挙陣営のメンバーや、対中強硬派、関税強硬派などを指名

トランプ氏は、大統領首席補佐官にスーザン・ワイルズ氏(トランプ陣営の選挙対策本部長)、国家安全保障担当の大統領補佐官にマイク・ウォルツ氏(米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」出身、対中強硬派)、政策と国土安全保障担当の次席補佐官にスティーブン・ミラー氏(前政権時の上級顧問、移民強硬派)の起用を発表しています(図表2)。また、大統領報道官にはカロライン・リービット氏(トランプ陣営の報道担当)を任命しました。

 

[図表2]次期トランプ政権の主な閣僚人事

 

また、行政部門では、国務長官にマルコ・ルビオ氏(対中、対イラン強硬派)、国防長官にピート・ヘグセス氏(退役軍人、FOXニュースの司会者)、司法長官にマット・ゲーツ氏(保守強硬派)が指名されました。このほか、商務長官にハワード・ラトニック氏(関税強硬派)、エネルギー長官にクリス・ライト氏(気候変動危機の否定論者)、国土安全保障長官にクリスティ・ノーム氏(トランプ支持のサウスダコタ州知事)が指名されています。

トランプ氏は前回の事態を踏まえ、親族の要職起用は見送りへ、市場は人事の安定性にも注目

独立行政機関について、トランプ氏は中央情報局(CIA)長官にジョン・ラトクリフ氏(前政権時の国家情報長官)、環境保護局(EPA)長官にリー・ゼルディン氏(化石燃料回帰推進派)の起用方針を明らかにしています。このように、トランプ氏は古くからの忠臣や、大統領選での功労者などを要職に抜てきして閣僚人事を固め、自身の政策を遂行しやすい組織を作り始めています。

 

なお、トランプ氏は前政権時、長女のイバンカ氏を大統領補佐官に起用し、その夫のクシュナー氏も大統領上級顧問に充てた経緯があります。当時は、政権内で幹部とトランプ氏の親族との意見対立も報じられるなか、政権発足から7ヵ月で多くの幹部が政権を離れる極めて異例の事態となりました。トランプ氏は今回、親族の要職起用を見送る模様ですが、政権人事の安定性も、市場の注目ポイントの1つになっています。

 

(2024年11月20日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『金融市場の注目ポイント、「次期トランプ政権」の閣僚人事【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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