(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●日本株は米関税引き上げを警戒、ただ実際は慎重な判断となり、株価急落リスクは小さいとみる。

●日本企業の業績は4-12月期決算に注目、ウクライナ情勢は懸念だが、一段の拡大は想定せず。

●日経平均は今後レンジ相場を上抜け年度末40,500円の予想、長期上昇トレンドは依然継続。

日本株は米関税引き上げを警戒、ただ実際は慎重な判断となり、株価急落リスクは小さいとみる

日経平均株価は、10月27日の衆議院選挙や11月5日の米大統領選挙といった重要イベントを通過した後、おおむね38,000円から40,000円のレンジ相場を形成し、方向感に欠ける相場展開が続いています。背景には、①次期トランプ政権の関税引き上げ政策への警戒、②日本企業の業績伸び悩みの懸念、ここ数日では③ウクライナとロシアを巡る地政学リスクの高まりもあると思われます。

 

[図表1]足元の日経平均株価のレンジ相場

 

①について、中国製品は60%、全輸入品は一律10~20%を課すとしていますが、弊社は中国に対しては40%へ引き上げ、その他の国は個別交渉と想定しています。公約通りにすべて関税を引き上げた場合、米国経済には強いインフレ圧力が生じると考えられるため、引き上げは相応に時間をかけて慎重に行われる見通しです。そのため、公約通りに一気に関税が引き上げられ、日本株が急落するリスクは小さいとみています。

日本企業の業績は4-12月期決算に注目、ウクライナ情勢は懸念だが、一段の拡大は想定せず

②の日本企業の業績について、3月期決算企業の4-9月期決算は、市場の想定よりも業績の伸びが鈍かったとの声が聞かれます。また、主要企業自身による今年度の業績予想も、純利益は前年同期比で依然マイナスとなっており、大きく上方修正されることはありませんでした。次回4-12月期の決算発表は、来年1月下旬から始まりますが、ここで上方修正の動きが顕著にみられるか否かが注目されます。

 

③のウクライナとロシアの戦闘激化は懸念材料であるため、市場には一定程度警戒が残り、しばらく状況を見守る流れが続くと思われます。ただ、弊社は一段の戦闘拡大と原油などの商品市況への深刻な影響は回避されると考えており、市場は徐々に落ち着きを取り戻す可能性が高いとみています。なお、トランプ氏はウクライナとロシアの停戦協議に意欲を示していることから、大統領就任後の対応も見極めが必要です。

日経平均は今後レンジ相場を上抜け年度末40,500円の予想、長期上昇トレンドは依然継続

以上を踏まえると、①から③に、よほどネガティブなショックが発生しない限り、日経平均は個々の材料を冷静に消化しながら、やや時間をかけて徐々に水準を切り上げていく公算が大きいと考えています。弊社は日経平均の年末着地水準を39,600円、来年3月末の着地水準を40,500円と予想しており、年度末にかけて日経平均はレンジ相場を上抜けていくとみています。

 

なお、少し長い目でみれば、日経平均は10年超続いた長期上昇トレンドの上値抵抗線を大きく上抜けており(図表2)、足元のレンジ相場を過度に心配する必要はないと思われます。参考までに、この上値抵抗線が来年3月末に位置する水準は36,700円程度です。そのため、仮に日経平均が年度内に37,000円を割り込んでも、長期的な上昇トレンドは継続中と判断されます。

 

[図表2]日経平均株価の長期上昇トレンド

 

(2024年11月22日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日本株】トランプ関税の株価急落リスクは小さいとみる 年度末には日経平均「4万円台」復活か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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