同性婚が認められていない日本…同性カップルの子育ても困難に
同性同士の夫夫(ふうふ)が子供をもち、子育てをしていく……そこには、どのような「法の壁」があるのでしょうか。世田谷用賀法律事務所の水谷江利弁護士に話を伺いました。
水谷「そもそも日本では同性婚が認められていませんが、これは『同性同士が法律上の結婚ができない』=『同じ戸籍に入れない=入籍できない』ということです。そのことによって『①二人の間の子を、二人の間の実子とすることができない』『②どちらかが亡くなった場合に、相続関係を生じさせることができない』という2つの法律的な問題が生じます。
一方で同性カップルは、同一の住民票で同一世帯となり、事実婚(内縁)と同じ状態を作ることはできます。それまでの関係で築いた財産の清算などは、この場合、法律婚の場合と同様に検討することができます」
現在、自治体によってはパートナーシップ制度が設けられていますが、水谷弁護士の事務所がある世田谷区でも、パートナーに対する介護、看護休暇など、さまざまな制度設計がなされています。
水谷「異性間の場合、『法律上の婚姻関係にない』といっても、ただちに目に見えた不利益が発生するとは限りません。異性間の場合、戸籍に入っているかどうかは一見して分からないからです。一方、同性間の場合は、いかに行政や民間が“結婚と同じ関係である”と太鼓判を押したとしても、勤務先や近所の方からの心ない発言などを受けたり、本来受けられるはずのサービスを受けることができなかったりする可能性はどうしても排除できません。
今年3月14日、札幌高等裁判所は、『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する』とする憲法24条1項は同性婚も保障するものとして、同性カップルの結婚を認めない民法、戸籍法の規定の運用について違憲とする判決を下しました。ただし、憲法上の判断はそうだとして、ただちに民法改正につながるかは不透明です。戸籍制度のある日本では『法律婚=入籍』です。同性カップルが入籍できるようにするには、性別上、男性と女性でしか入籍できない戸籍上の規定・運用を、男性と男性、女性と女性でも入籍させることができるようにするしかありません。日本において法的に同性婚が認められるようになるには、民法や戸籍法の高い壁があるのです」
同じように、同性同士のカップルが子供をもちたいと考えたときにも“法の壁”が立ちはだかります。
水谷「同性カップルにおいても、同じ世帯に子供を迎え入れ、育てることは住民票上、世帯上は可能です(ただし、その子を税務上、社会保険上の扶養対象とするには、
民法も戸籍法も、実は、『結婚は男女でしかできない』とは規定していません。しかしながら、民法、戸籍法上、法律上の夫婦の間に生まれた子は、二人の間の子として戸籍に入れられますが、法律上の結婚をしていないカップルのもとに生まれた子は、まず生まれた“母”の戸籍に入ることとされています(民法702条、戸籍法52条)。
そうすると、同性婚のカップルが子をもうけようとした場合、
一見、これにより親子関係を作ることができるように見えます。でも、これでは、『二人の間の子』というのとは違いますから、二人の親として、共同親権を行使するということが難しくなります。そうすると、学校への入学許可、銀行預金の管理、パスポートの発行などの、親権にかかわる部分は、親権者となったいずれかの親においてしか行えないことになります。同性カップルにおける子の問題も、やはり、同性婚が法的にOKとならないと、クリアされない問題といえるでしょう」
昨年、岸田文雄首相は、同性の結婚について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と国会で述べました。日本の社会、家族は「戸籍」によってカタチづくられているため、同性婚を認めるということは、国の在り方を大きく変えることになります。同性婚の議論は、私たちが想像するよりも複雑な問題のようです。ただ法の壁は高くても、私たち一人ひとりの「心理的な壁」は取り去ることができます。心の壁がなくなれば、同性カップルの親子が幸せに暮らしていける社会に、一歩、近づけるはずです。
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