弁護士からのアドバイス
由美さんは、聡子さんと一緒に居住し、仕事をしながら部屋の片づけを行い、遺産調査に尽力しましたが、最終的には自宅を失い、弟との絆も壊れてしまいました。
では、聡子さんがどのような遺言書を残していれば、由美さんは悲劇に巻き込まれずに済んだのでしょうか。
今回の件での大きな問題は、以下の3つがありました。
①由美さんに不動産を残すという遺言書を作成しなかった。
②聡子さんの預貯金がどこにあるかわからなかった。
③価値のあるものないものが汚部屋にあふれ、対処が難しかった。
①を解決するためには、「○○の不動産は、長女由美に相続させる」という内容の遺言書を作成する必要がありました。このような遺言書があれば、不動産の評価額が由美さんの法定相続分を超えていたとしても、誠さんに代償金を支払う必要はありませんでした。
②を解決するためには、遺言書に「◆◆銀行の口座(口座番号××)の預貯金は、長女由美と長男誠に2分の1ずつ相続させる」のように遺言書の本文に口座情報を記載する、又は別紙として財産一覧表を添付する必要性がありました。
③を解決するためには、「その余の財産は、長女由美に相続させる」という、包括的な文言の記載をする必要性がありました。このような記載があれば、由美さんは、汚部屋にあった色々な品を単独で取得することができましたので、自由に処分することができました。
遺言書がない場合、残された相続人は思わぬ悲劇に見舞われる可能性があります。遺言書の作成は、ご自身の意思を明確に伝え、相続手続きを円滑に進めるうえで必要不可欠です。
もっとも、作成する内容によっては、法的な専門知識が必要となりますので、弁護士等の専門家のサポートを得ることで、ご自身の意向が反映された遺言書を作成することができます。
三浦 裕和
弁護士