大病院と変わらないレベルの治療・手術が、近隣地域かつ待ち時間なしに受けられたら……。現在、そんなニーズに応えた医療体制が着々と整いつつあります。患者と医師、双方にメリットのあるクリニック・ドミナント戦略が、地域医療の救世主となるかもしれません。本記事では、医師で経営者の髙松俊輔氏の著書『低単価の診療科で高収益を実現するクリニック・ドミナント戦略』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、新しい医療経営戦略「クリニック・ドミナント戦略」について解説します。

患者ニーズを満たし収益性も高いデイサージェリー

開業以前、私は東京大学附属病院の耳鼻科の医局に所属していました。大学病院では最先端の医療が受けられる反面、待ち時間が長く一日がかりになることもあります。患者は朝から痛みや苦しみに耐えながら、ただひたすら診察の順番を待ち続けなければなりません。

 

私はそんな状況を目の当たりにして、患者にとってより良い医療はなにかと考えました。 患者が近隣のクリニックに気軽に通え、なおかつ大病院と変わらない治療が受けられるなら、最も快適な地域医療となりえるのではないかーー。そう考えた私は、2002年に念願の耳鼻咽喉科クリニックを開院したのです。 クリニックを開院してしばらく経ち、私は今までのプライマリーケアではない、より高度で先進的な医療サービスを提供することを思いつきました。

 

そのきっかけとなったのは、当時、医療大国アメリカで行われていた「デイサージェリー」を知ったことです。アメリカでは現在、日帰り手術や長くても1泊2日の短期入院手術を行う「デイサージェリー」が主流になっています。日本も近い将来、同じように「デイサージェリー」が主流になるはずだと考え、新たな挑戦として耳鼻咽喉科領域における手術治療専門施設を始めることにしました。

 

日々診療を行うなかで、耳鼻咽喉科領域の日帰り・短期入院手術に対する患者のニーズが大きいことは以前から感じていました。その一方で、既存の医療機関の供給が追い付いていないという需給のアンバランスも同様に感じていました。

 

慢性副鼻腔炎や声帯ポリープなどの耳鼻咽喉科領域の手術は緊急性の高いものではないため、患者は仕事や家庭の事情から短期間で負担の少ない治療を望むのが一般的です。しかし当時、これらの手術は大規模な基幹病院や大学病院でしか受けられず、診察だけでも何時間も待たなければならないうえ、手術となると数カ月待ちが当たり前となっていました。

 

さらに、ようやく手術を受けられることになっても、入院期間が1週間程度と長く、仕事や家庭に与える影響が大きいという状況が続いていたのです。そのため、多くの患者が手術すればQOL(クオリティーオブライフ=生活の質)が高まり、大きな治療効果が見込めることは分かっていても、二の足を踏んでしまっている状況でした。

 

こうしたなか、耳鼻咽喉科のスペシャリストによる日帰り・短期入院手術が民間クリニックで受けられ、さらに術後は自宅の最寄りのクリニックで経過観察を受けることができれば、患者の治療負担は大幅に軽減し、より多くの患者が手術による治療を前向きに検討するようになると思いました。そして、現在の需給のアンバランスを解消できるのではないかと考えたのです。収益性についても、手術に対する診療報酬は高額に設定されているうえ、たび重なる改定でも減額されずにむしろ増額されています。

 

例えば、「内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型(副鼻腔単洞手術)」では、2014年度に1万点であった診療報酬点数が、2018年度は1万2000点と2000点増加しています。また、「鼻中隔矯正術」では2014年度の6860点に対し、2018年度は8230点とこちらも1370点増加しました。手術の診療報酬は今後も高い点数を維持し、少なくとも大きな減額はなく十分に収益性も確保できることが予想できました。

 

しかし、手術施設や手術を執刀する医師を一つのクリニックで確保、維持することは困難です。手術が必要な患者が一定数いるといっても、一つのクリニックでは手術適応の患者が一日に1人いるかどうかといったところで採算がとれません。

 

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※本連載は髙松俊輔氏の著書『低単価の診療科で高収益を実現するクリニック・ドミナント戦略』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

低単価の診療科で高収益を実現するクリニック・ドミナント戦略

低単価の診療科で高収益を実現するクリニック・ドミナント戦略

髙松 俊輔

幻冬舎メディアコンサルティング

“稼ぐ力”を身に付け、地域医療に貢献する新たなかたちのクリニック経営とは? サージクリニックを核にした医療ネットワークで 経営を安定させ、医療の質を高める革新的な手法を紹介! 東京商工リサーチによると、2023…

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