急激な物価の高騰、高まる人件費によって膨らみ続けるコスト
診療報酬が下がり続けることで収入は減る一方で、クリニック経営におけるコストは上がり続けています。物価は2022年のロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰の影響を受けて急上昇し、その後円安が拍車をかけ、今もなお上昇し続けています。
2023年4月に日本医師会や日本病院会などの医療団体が合同で政府に提出した医療分野における物価・賃金高騰対策に関する要望によれば、2022年10~12月分における対前年比の光熱費は有床クリニックで月約21.8万円増、無床クリニックで月約3.8万円増という結果になっています。これを単純に年換算(×12)してみると、有床診療所は約261.6万円、無床診療所で約45.6万円の増加です。
この調査は都道府県医師会において任意に抽出したクリニックを対象に行われましたが、エネルギー価格の上昇がクリニック経営に与える影響について、7割以上のクリニックが「影響がある」と回答する結果となっていました。
光熱費の高騰に加え、人件費の上昇も経営を苦しくしています。私がクリニックを開業した22年前は、5人のスタッフを雇用し、そのうち医療事務の一人当たりの一カ月の基本給は17万円程度でした。しかし、現在は1カ月23万円の基本給で募集を出しても応募がなかなか来ないなど、当時と比べると給与水準がかなり高くなっています。
これだけ人件費が高騰し、インフレが進行し人材確保が困難となっているなかで、財務省や厚生労働省が保険点数を上げないのが私には理解できません。このままでは多くの保険医療機関の経営が悪化、逼迫し、それがスタッフの雇用に影響してますます経営が悪化します。
ゆくゆくは医師の保険医療機関離れが進み、研修医が終了すると優秀な医師は皆、美容クリニックに就職し、本格的な医療崩壊が起きると予想できます。私は、美容外科だけが利益を出せる診療科になる未来は近いと考えています。
髙松 俊輔
医療法人社団翔和仁誠会
理事長
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