アメリカから脱出者激増の可能性も
アメリカ人の海外居住者にとって問題なのは、2重課税よりもむしろ、海外金融口座があたり、海外の会社で役員をしていたり、一定以上の会社持ち分があったりすると、IRSに対して開示フォームを提出する義務があり、これが厄介です。
一方で提出しなければ、そのペナルティーが大きく、このコンプライアンスを確保するためにコストがかかります。
仮にトランプ氏のアイデアが合法になるとすれば、今度は個人所得税が極めて低いモナコのような無税国もしくは低税率の国々へ出ていくアメリカ人が激増すると思われます。
アメリカでは、最近ではまた相続税専門の弁護士は大変忙しいようです。現在、アメリカの相続税基礎控除額は1,361万ドル(20億円、日本の基礎控除額は約4,800万円)。インフレ率の上昇によって基礎控除額は2025年には1,399万ドル(21億円)となる見込みです。
だが、現在の基礎控除額は2025年までの時限立法となっていますので、議会に動きがなければ、2026年には基礎控除額は2017年の水準である550万ドル(8億円)に戻ることになります。そうなれば大きな減額となり、大変な騒ぎとなる可能性が高いでしょう。
そこで多くの富裕層は撤回不可能なトラスト(信託)を作成し、そこに資産を移転しています。この信託(Irrevocable Trus)は日本には存在しません。
このようなことはオバマ大統領時代にもありました。ブッシュ大統領時代の相続税減税政策が2012年に廃止になり、相続税控除額も500万ドルから100万ドルに減額されるのを恐れ、トラストの作成が盛んに行われました。しかし、そのまま500万ドルの相続税基礎控除額がアメリカ議会の承認を経て継続されました。
この過去を鑑み、2024年は年間贈与税基礎控除18,000ドル(270万円)まで、贈与は1,361万ドル(20億円)の相続税・贈与税基礎控除枠にはカウントせずに受贈者に贈与できるので、とりあえずこの方法で昔のようにマメに毎年自分たちの資産を少しずつ子や孫に贈与する人も出てきているようです。
来年1月にはトランプ政権になります。富裕層たちはトランプ大統領がそのときの演説でどのような発言をするのかをかたずを呑んで待っているといっても大げさではありません。
税制への議論が乏しい日本
日本はどうでしょうか。悲しいかな相続税はおろか、所得税の議論もないといっていいでしょう。党首討論でもせいぜい消費税率をどうするかを表面的に語るだけで、税制の議論は国会の予算委員会でほとんど行われない印象です。
「政治とカネ」の問題が解決できれば日本は豊かになるのでしょうか。税制に無関心の、これでも国会議員が日本ではつとまるのが不思議で仕方ありません。先進国首脳たちにとっては不思議の一つともいわれているようです。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾
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