(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢親の終の棲家をどうするか。一つの選択肢として「老人ホーム」が頭に浮かぶ人も多いでしょう。しかし、入居してもらったら安心というわけにはいかなくて……。本記事では、Aさんの事例とともに老人ホームの入居トラブルについて、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。

近くに住んでいるのになぜ見舞いに来ないのか

Aさん夫婦は子どもの大学までの教育費が終わって安堵したところでしたが、次は親の介護(施設費用等含む)にお金がかかるようになります。Aさんの子どもたちは独立、結婚し都内で暮らしています。Aさん夫婦も60歳以降、再雇用で働いているため、父のことは施設に任せきりになります。

 

父が老人ホームへ入居したタイミングで、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、お見舞いに行くことができなくなりました。その後、コロナは落ち着いたものの、仕事が忙しくなり、お見舞いどころではなくなっていました。「寂しい、寂しい」と父から時折電話がありましたが、可哀想に思いながらも仕事を理由に断ってしまっていました。

 

父は老人ホームの施設の人に「息子は近くに住んでいながらも全然見舞いに来ない。薄情なやつだ」と漏らすようになります。しまいには、「私を家から追い出し、乗っ取られてしまった」とまで言いだしはじめ……。

 

老人ホームから失踪した父

ある日、施設から連絡が入りました。父がいなくなったというのです。捜すにしても、いままで誰と親しくしていたのか、行きつけのお店があったのか、皆目見当もつきません。足腰の弱っている父がそんなに遠くへ行くことはできないはずなので、しらみつぶしに施設近くを妻と手分けして捜しましたが、見つかりません。妻と2人、一旦家に戻って警察へ連絡することも考えはじめたころ、夜遅くなって父が家に帰宅してきました。

 

なんと、べろんべろんに酔っぱらっていました。みんなが心配して探していたことを伝えると、美味しいご飯を食べてきたとお店の領収書をみせます。

 

「ご、5万円……」Aさんは目眩がしてきました。1ヵ月の年金の4分の1以上を使ってしまっています。その日は注意して施設に送り届けたものの、父はたびたび施設を抜け出すようになります。そのたびに領収書を持って帰ることが続きます。

 

認知症にでもなったのかと心配する長男に、父は「お前(長男)や孫、兄弟、誰も見舞いに来ない、寂しいから店で親切に話をしてくれた人みんなにご馳走した」というのです。父の暴挙に長男は絶句します。

 

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