ビュッフェスタイルには、さらなるメリットが!
食べ放題の店のなかには、「ビュッフェスタイル」といって、店の真ん中に大量の食べ物を置き、客が自分で好きなものを取って食べる店が少なくありません。ビュッフェスタイルの店には、さらに経営上のメリットがあるのです。
すぐにわかるのは、注文を取る手間がかからないし、料理を皿に盛り付ける手間も客席まで料理を運ぶ手間もかからない、ということですね。客が来店して直ちに食べ始めるので、客の回転が早い、ということもメリットでしょう。
シェフの労働という点でもメリットは大きなものがあります。注文を受けてから料理を作る店だと、食事時だけ忙しくてあとの時間は暇になる…というシェフも多いでしょうが、ビュッフェスタイルだと朝から調理を始めることができます。
それから、1人前作るのと20人前作るので手間が20倍かかるわけではありませんから、作業が効率的に行えます。規模の経済ですね。
材料の仕入れ面でもメリットがあります。普通の店では客が何を注文するかわからないので、メニューにある品を作るための材料をすべて揃えておく必要がありますが、ビュッフェスタイルの店では、作る料理を決めて使う材料を絞って購入するので無駄がありません。少品種の材料を大量に買うので、場合によっては値引き交渉もできるかもしれません。
このように、食べ放題の店というのは、客も嬉しいし店も儲かるということで、多くの店が営業しているわけですね。
食べ放題の店を楽しむ「食べ方」「考え方」
最後に余談ですが、食べ放題の店に行く客としての心得を記しておきましょう。ひとことでいえば「無理をして食べない」ということです。食べ放題の店に行くと、「元をとらなければ」という義務感や「せっかく食べ放題なのだから」というお得感などから、満腹になっても食べ続けている人を見かけますが、それはやめましょう。
入店するときに3,000円払ったとしても、そのことは忘れて自分がいちばん幸せになることだけを考えて、食べる物と食べる量を決めましょう。たくさん食べたら3,000円が戻ってくる、というわけではないのですから、払った金のことは忘れて、自分の今後の幸せのことだけを考えればよいのです。
食べ放題の店に限らず、払ってしまって戻って来ない金は多いですね。たとえば本を買った代金は、本を読んでも読まなくても戻って来ません。それならば、最初の数ページを読んでつまらないと判断した本を最後まで読むべきではありません。最後まで読むと買った代金と読んだ時間を両方損することになるからです。
このように戻ってこない金のことは「サンクコスト」と呼びます。これは「沈んでしまった」という意味の英単語です。サンクコストのことは忘れて、本を読むのと散歩に行くのとどちらが幸せになれるか、だけを比較しましょう。
「食べ放題の店を選んだ自分が愚かだった」と思いたくないから元をとろうと頑張るのは、自分に対する見栄のために苦しい思いをすることですから、それもやめておきましょうね。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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