「解雇規制緩和」で経営者は喜ぶべきか?「ダメな社員」を手放しやすくなるチャンスかと思いきや…企業側が直面する“まさかの落とし穴”

「解雇規制緩和」で経営者は喜ぶべきか?「ダメな社員」を手放しやすくなるチャンスかと思いきや…企業側が直面する“まさかの落とし穴”
(※写真はイメージです/PIXTA)

自民党総裁選の際、何人かの議員が「解雇規制の緩和」に言及し、突然の議論に驚く声も多かったことでしょう。しかし、その背景には、2019年に経団連の中西宏明会長やトヨタの豊田章男社長が「終身雇用の維持は難しい」と発言したことがあり、実はその時から変革の兆しは見えていました。現在、解雇規制の緩和が真剣に検討される中で、経済界は新たな働き方に向けて動き出しています。本稿では、社員50名の新聞販売店を23年間経営し、多くの企業を支援してきた米澤晋也氏が、解雇規制緩和がもたらす日本の労働環境の変化について考察し、労働者がこの変化を乗り越えるために必要なスキルや、企業が講じるべき対策を探ります。

「他社から引く手あまたな人材」を育成する意義

解雇制限が緩和されたら、企業はどのような影響を受けるでしょうか。

 

緩和の流れを受け、「ダメな社員を辞めさせやすくなった」と喜んでいる経営者もいますが、働く人が再就職しやすくなれば、「ダメな経営者」のもとから人材が流出することになりますので、経営者は手放しに喜んではいられません。

 

経営者が最も力を入れるべきは、副業の推進を含む人材育成だと考えます。

 

「労働力が流動化するのならば採用に力を入れるべき」と考える経営者が多いのですが、そもそも優れた人材に選ばれることなしに採用を強化しても効果はありません。入社しても、すぐに辞めてしまうでしょう。

 

経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」によると、投資家が中長期的な投資戦略において最重要視しているのは「人材投資」であることが明らかになりました。しかし、日本企業はそのウェイトが低く、特に人材育成が脆弱であるという課題が浮き彫りになっています。

 

「人は石垣」の言葉通り、企業繁栄の源泉である人材育成にこそ注力すべきだと考えます。

 

中には、人材育成に力を入れたら「せっかく育てた人材を他社に持っていかれる」と考える経営者がいますが、それは逆で、人材育成に力を入れない企業から人材が去っていくのです。

 

自社を辞めたとしても、他社から引く手あまたの人材を育成することが、結果的には人材の定着と採用力の向上につながり、企業の人事競争力を高めると考えるべきです。

労働者は、「キャリアのポートフォリオ」を形成し本業に還元する

労働者も働き方の変革を余儀なくされるでしょう。

 

具体的には、本業から安定した収入を得ながら複数の副業を持つ「キャリアのポートフォリオ」を形成し、そこで習得したスキルを本業に還元するという働き方です。

 

スキルは大きく分けて3種類あります。

 

1.その企業だけで通用するスキル

 

2.その業界だけで通用するスキル

 

3.業界を超えて活用できるスキル


3は、戦略思考、チームビルディング、プロジェクトマネジメントなどの普遍性の高いスキルです。

 

社外の人間と交流しない人は、1と2のスキルの習得にとどまる傾向があります。終身雇用の時代では、それらを強化すれば組織内での地位を強固にしキャリアアップできましたが、ひとたび組織から離れたらキャリアは危ういでしょう。

 

1、2、3、をセットで習得することが、労働力が流動化する時代の生存戦略だと考えています。

 

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