相続税の申告期限は10ヵ月だが…「8,200万円はすべて長男へ」と遺言が。不満を持った二男が「遺留分請求」→驚愕の結果【弁護士が解説】

相続税の申告期限は10ヵ月だが…「8,200万円はすべて長男へ」と遺言が。不満を持った二男が「遺留分請求」→驚愕の結果【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺留分を侵害されたら、遺留分侵害額請求をして侵害された遺留分相当の金銭を受け取ることができます。遺留分を受け取った場合、相続税はどうなるのでしょうか? また、相続税の申告期限を過ぎてから遺留分を受け取った場合は、どうすればよいのでしょうか? 本記事では、遺留分と相続税について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

相続税の計算方法

相続税の計算の流れと概要は次のとおりです。ここでは、次の例を使って解説します。

 

・法定相続人:長男、二男の2名

・課税価格の合計額:8,200万円

・遺言書で長男が全財産を相続した

・その他特記事項なし

 

課税価格の合計額を計算する

はじめに、各遺産などの評価額を合計して、課税価格の合計額を計算します。

 

なお、一定の要件を満たすことで土地を最大8割減で評価できる「小規模宅地等の特例」を適用する場合は、この段階で適用します。ただし、相続税の申告が必要かどうかを判定する際は、特例の適用がないものとして判定しなければなりません。ここでは、すでに「8,200万円」として計算結果が出ているものとします。

 

相続税の基礎控除額を計算する

次に、先ほど解説した相続税の基礎控除額を計算します。例の場合は法定相続人が2名であるため、相続税の基礎控除額は次のとおりです。

 

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×2名=4,200万円

 

課税遺産総額を計算する

次に、「課税価格の合計額」から基礎控除額を控除して、課税遺産総額を計算します。例の場合は、次のとおりです。

 

課税遺産総額=8,200万円(課税価格の合計額)-4,200万円(基礎控除額)=4,000万円

 

「各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額」を計算する

次に、「各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額」を計算します。この段階では、実際に誰がどれだけ遺産を受け取ったかどうかに関わらず、課税遺産総額に法定相続分を乗じた価額を算定します。例の場合は、次のとおりです。

 

・長男:4,000万円(課税遺産総額)×2分の1(法定相続分)=2,000万円

・二男:4,000万円(課税遺産総額)×2分の1(法定相続分)=2,000万円

 

相続税の総額を計算する

次に、「各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額」を速算表にあてはめて税額を算出します。

 

[図表1]相続税の総額計算

 

例の場合は、次のとおりです。

 

・長男:2,000万円×15%-50万円=250万円

・二男:2,000万円×15%-50万円=250万円

 

ただし、これはあくまでも計算過程で算出された税額であり、実際に長男が250万円、二男が250万円を納税するということではありません。そこでいったん、ここで算出された税額を合計します。

 

250万円+250万円=500万円

 

これが、この相続における相続税の総額となります。

 

各人の相続税額を計算する

最後に、算出した相続税の総額(500万円)を、実際に遺産を受け取った割合で按分します。例の場合には、長男が全財産を相続するため、この500万円はすべて長男が納税します。一方、二男が納付すべき税額はありません。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は、被相続人の死亡日)の翌日から10ヵ月以内です。10ヵ月と聞くと、余裕があると感じる人もいるでしょう。しかし、このあいだに遺産を洗い出して評価し、遺言書がない場合は遺産わけの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をまとめ、相続税を計算し、納税資金を準備する必要があり、実際にはさほど余裕があるものではありません。

 

そのため、特に相続税がかかりそうなケースでは、相続が起きたら早期に専門家へ相談し、準備を進めることをおすすめします。

 

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