相続税の申告期限は10ヵ月だが…「8,200万円はすべて長男へ」と遺言が。不満を持った二男が「遺留分請求」→驚愕の結果【弁護士が解説】

相続税の申告期限は10ヵ月だが…「8,200万円はすべて長男へ」と遺言が。不満を持った二男が「遺留分請求」→驚愕の結果【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺留分を侵害されたら、遺留分侵害額請求をして侵害された遺留分相当の金銭を受け取ることができます。遺留分を受け取った場合、相続税はどうなるのでしょうか? また、相続税の申告期限を過ぎてから遺留分を受け取った場合は、どうすればよいのでしょうか? 本記事では、遺留分と相続税について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

遺言書で遺留分を侵害されると…

遺言書で遺留分を侵害された場合どうなるのでしょうか? 先ほど解説したものと重複する部分もありますが、改めて解説します。

 

遺留分を侵害する遺言書も有効である

遺留分を侵害したからといって、遺言書が無効になるわけではありません。遺留分を侵害する内容の遺言書であっても有効です。

 

たとえば、相続人が長女と長男である場合、「長女に全財産を相続させる」という内容の遺言書は長男の遺留分を侵害しています。しかし、それでもこの遺言書は有効であり、長女はこの遺言書を使って遺産である不動産を自身の名義に変えたり、被相続人の預貯金口座を解約したりすることができます。

 

遺留分侵害額請求の対象となる

遺留分を侵害する内容の遺言は、遺留分侵害額請求の対象となります。遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額の金銭を支払うよう請求することです。先ほど挙げた例の場合には、遺留分を侵害された長男は遺産を多く受け取った長女に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。この請求をされたら、長女は長男に対して、遺留分侵害額相当の金銭を実際に払わなければなりません。ただし、交渉などによって分割払いとすることはできます。

 

なお、遺留分侵害額請求をするかどうかは、遺留分権利者の自由です。長男が遺留分侵害額請求をしなければ、長女は遺留分相当額を長男に支払う必要はありません。実際に、遺留分権利者が遺言の内容に納得している場合や相続人間で良好な関係を維持したいと考えている場合、遺留分侵害額請求をしないことも有力な選択肢となります。

相続税の基本

遺留分と相続税について解説をする前に、相続税の概要について解説します。

 

「相続税」とは?

相続税とは、遺産に対してかかる税金です。もう少し厳密にいうと、次の式で計算される「課税価格の合計額」が相続税の対象となります。

 

課税価格の合計額=遺産総額+死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産(一定の非課税枠あり)+被相続人が過去にした一定の贈与財産の価額-債務と葬式費用

 

相続税は、「土地にいくら、預貯金にいくら」と個別で計算するのではなく、この「課税価格の合計額」を基礎として計算します。

 

相続税がかかるケース

相続税がかかるのは、先ほど解説した「課税価格の合計額」が基礎控除額を超える場合です。相続税の基礎控除額は、次の式で算定します。

 

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

課税価格の合計額からこの基礎控除額を控除した残りをベースに、相続税が計算されます。

 

なお、課税価格の合計額を基礎控除額が超える場合であっても、特例の適用などを受けることで結果的に相続税がゼロとなることはあります。相続税を自分で正確に計算することは容易ではないため、相続税がかかりそうな場合は税理士へご相談ください。

 

相続税がかからないケース

課税価格の合計額が「相続税の基礎控除額」を下回る場合は、相続税はかかりません。ただし、課税価格の合計額が相続税の基礎控除額を下回るかどうかを正しく判断するには、遺産を正確に評価する必要があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家へご相談ください。

 

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