所得税率95%を皮肉ったビートルズの名曲「タックスマン」
1966年に発売されたビートルズの7番目のアルバムに収録されている「タックスマン」という楽曲があります。これは、当時の労働党のウィルソン内閣が所得税の最高税率を95%に引き上げたことを皮肉った内容となっています。前述したBBCの報道内容が約60年前のビートルズの楽曲を思い出させます。
英国における増税案では、保守党政権時代のリシ・スナク内閣のジェレミー・ハント財務相が2022年11月に増税と支出削減の方針を発表しています。この時の英国の所得税の最高税率は45%でした。
余談ですが当連載の共同執筆者である大阪学院大学の八ッ尾順一教授は、このビートルズの曲を聴いて、日本に税金の歌がないことに気が付いて、現在、11枚の「税金ソング」(作詩と歌唱)のCDを作成しています。「タックスマン」がきっかけになったのです。
ロンドンは、世界の富裕層が多く住む都市の一つにあげられています。英国が所得税率を引き上げた場合、多額の納税をしている超富裕層の国外脱出を促す効果がありそうです。結果として、財政を悪化させるのではないかという意見が出されています。
英国では超富裕層の出国に際して「出国税」を課す案もあるようです。フランスも2024年10月に法人税率の引き上げと年収50万ユーロ(約8,000万円)以上の世帯に所得税を増税することを決めました。
また日本は2023年度税制改正において、「ミニマム税」を創設しました。2025年4月以降の実施予定です。
ミニマム税の対象者は年間の合計所得金額が約30億円を超える納税者です。合計所得金額から特別控除額である3.3億円を引いた金額に、税率22.5%を掛けます。その金額が通常の所得税額を超えた場合、その差額分を申告納税しなければなりません。
デジタル課税の次に押し寄せる波
法人課税の分野では、OECDが中心となって活動を行ってきた大手IT企業に対する「デジタル課税」が2024年のリオデジャネイロ宣言において、国際間の課税ルールとすることが決まりました。
もう1つの課題が超富裕層への課税です。冒頭から英国の事情を説明してきましたが、フランス、あるいは日本と、富裕層への増税攻勢は続いています。今後は、個人の納税地となる「住所」をどこに定めるのか、また財産の所在地をどこにするのか等が、超富裕層にとって喫緊の課題となるものと思われます。
さらに超富裕層の場合は、相続税の課税も視野に入れる必要があります。インドの財閥タタ・グループの元会長である実業家ラタン・タタ氏が2024年10月に死去しました。インドは、中国と並んで経済成長が著しい国ですが、相続税がありません。超富裕層は、所得税と相続税を「両にらみ」で、タックスプランニングをする必要に迫られます。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員
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