今回は、融資金2億円が原資というケースで、投資物件を選ぶ際の留意点を説明します。※本連載は、株式会社OKAMURA代表取締役、岡村恭資氏の著書『なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます』(風詠社)の中から一部を抜粋し、投資用不動産の取得と売却について実践的な方法を紹介していきます。

年8%の利回り物件なら年間1千600万円の収入が発生

年収1千万円以上のあなたは職種も世間からも申し分なしで融資を申し込めば、不動産収益物件の場合に限って銀行は喜んで融資するはずです。しかも最初から不動産の実力を含めて2億円は問題ありません。

 

我々不動産業者が最も簡単に不動産投資家にできる対象があなたのような方です。

 

つまり、問題なく2億円が融資されると何が起きるか、今までの話で推測していただくことは簡単でしょう。

 

残念なことは10パーセント利回りといった対象物件が、ほとんどないということです。しかし、物は考えようです。時間を掛けずに、利回り8パーセントなら、年間1千600万円の収入が突然発生するわけです。10パーセントの2千万円は欲しかったというのは欲張りすぎです。ここは8パーセントの2億円で抑えておきます。

 

このクラスになりますと物件の見方を変えていきます。鉄筋コンクリート造陸屋根(りくやね)という構造になります。中には鉄骨造というものもありますが大体歪みが生じるという欠点があるので対象から外しましょう。

投資の対象は新耐震構造の基準を満たす物件

阪神淡路大震災の時に神戸の街で傾いたビル、倒壊したビルの写真をご覧になったことがあると思いますが、建築基準法は災害が起こるたびに法律で建物構造を強化するようにしてきました。この神戸のビル災害を決定づけたのは昭和五十六年六月一日に改正された新耐震構造基準を備えているかどうかでした(平成六年改正、平成十六年改正)。

 

それ以前の基準で建てられたものは倒壊や被害が著しく、その基準で建ったビルは被害がなかったことで新耐震構造の基準の優秀さが証明されました。ということで最低の条件は昭和五十八年以降の竣工物件のみです。

 

法律が出来、計画図面が出来て建物が完成するのがこれ以降でしょう。さらに言えば、陸屋根という屋上が水平面でできている建築物が大半ですが、これが曲者で年月が経てば必ずといってよいほどに太陽熱や風雨によって痛みます。なかには手入れが行き届かずにひびを放置した結果、雨水がコンクリートを浸食し、中の鉄筋まで到達すると錆を生じて、膨らみ、ついにはさらなる被害として雨漏りまで生じるようになります。

 

こうなると構造体に影響します。つまり、耐久性を劣化させますので購入物件としては不適格です。少なくとも修繕履歴データを取り寄せて、定期的なエレベーター検査と屋根の防水工事を五年ごとに行ったものを対象とします。長年のうちに痛む部分は配管設備です。いまでは配管を取り換えることなく、内部を新しく被覆できる技術がありますので工事しているかしていないかのチェックをしましょう。

 

あとは入居者の気持ちになって物件を見た場合、どこが問題か、美装も含めてご覧になり、表面だけでも塗装をし直す必要があれば価格の交渉時に工事代金分を引いてもらうようにしましょう。2億円の購入可能者はそれほど存在しません。

 

その他、敷金は日本中で同じ基準の取り扱いがなされていないようです。以前、入居時に敷金三カ月分などを先取りしていた時代がありましたが、関西の一部を除き、最近の裁判所判例ではことごとく、入居者の権利が優先されています。基本的な考え方は宿泊施設に宿泊した状態と同等という考えです。

 

ホテルに泊まった客に対して壁紙を変えて出ていくように要求しないのと同じことが所有者に求められています。経年劣化による傷みは、入居者が故意に変化させたわけではないので敷金は基本的に全額入居者に返還するという流れです。

 

これに対抗して入居時にどうしても余計なお金を取ろうとするところがあって、礼金や敷金から一カ月分を最初から返さないという慣習を作っている地区があります。あなたが購入する建物も以前から入っているテナントは敷金を多ければ家賃の十カ月分、マンションでは三カ月分保管していることになっています。

 

資金不足の管理会社だと、この保管している敷金に手を付けて倒産してしまい、所有者が返金負担するという話もあります。必ず、敷金の保管はご自分でしてください。売買の成立後、決済日を境にこの敷金は全額購入するあなたに移行します。ここはチェックです。また、決済日からの固定資産税、都市計画税についても前日付で売主買主按分します。地域によって税金の負担開始を四月一日から、または一月一日としたりするので慣習に従ってください。

不動産投資の出口を決めるのは自分自身

さて、一棟を購入出来て、すぐに収入は増えます。それから頭金なしの場合の返済金額ですが、十年百二十回で金利2パーセントとすれば、月額で約184万円です。収入が133万円ですから50万円は手出しとなります。今度は、二十年で二百四十回にしてみましょう。月額で約100万円です。

 

いかがでしょうか?おそらく、月に20万円程度が増えるだけです。結局、こんな大きな物件を最初から融資で購入すると無理があるということです。不動産の価値とあなたの年収をもってしても2億円の物件を全額借入で購入すれば、買わない方が良い結果となります。

 

但し、生活費に問題のないあなたに将来の毎年の不労所得1千600万円は魅力です。しかも、あなたが支払ったわけではなく入居者が支払ってくれた資産です。なんとなく資産は良いものに思えるでしょう。不動産とはそういうものです。本当に支払いが終わってみれば年間1千600万円は確かな収入です。小さいアパートを購入して、実績を積んで数年後には一部を売却して自己資金を膨らませた後に、このような物件を購入する。

 

その時は半分を自己資金でまかなえば返済は少なく出来るし、売却する時期が来れば大きなリターンとなるということです。自動車でいえば、不動産投資のうちアパート経営というものはターボ付きエンジンに変化したと思っていただくとよいでしょう。確かにスピードは速くなったが燃費もそれなりになった。

 

つまり経費が掛かるということです。毎月エレベーターメンテナンス費用が数万円もかかります。アパートにはエレベーターがないので、それだけ経費が掛からないということです。それでも他の車と比べたら、すごく速いということです。ターボ付きなので同じように興味のある人にとって魅力的ですから売却すれば当然売れます。そしてステップアップすることを繰り返して、最終目標地へ行くということになります。

 

間違いないのは最終地を決めるのはあなたであり、他の誰でもありません。つまり、不動産投資に限っては誰からも停止命令を受けないのです。なぜなら、常にプラスで移行するので止めようがないのです。止める状況として考えられるのは、売却目的のため、入居者に立ち退いてもらうという場合でしょうか。そのまま置いておけば家賃を生んでくれるわけですから、いつでも引き取り手は現れるでしょう。

本連載は、2016年7月9日刊行の書籍『なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます

なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます

岡村 恭資

風詠社

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