今回は、脱税や不正が通用しない不動産取引の世界について、著者のエピソードをもとに見ていきます。※本連載は、株式会社OKAMURA代表取締役、岡村恭資氏の著書『なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます』(風詠社)の中から一部を抜粋し、投資用不動産の取得と売却について実践的な方法を紹介していきます。

朝早くに突然押しかけた「国税局」

十年ほど前に、私の身に起きたエピソードを記します。

 

大分県のとある駅隣地の取引にかかわったのですが、売却人が脱税してしまったらしいのです。国税局が突然、裏取りのために、私の自宅へ訪れました。

 

国税局も警察も自宅に押し掛けるのは朝の早い時刻です。誰もまだ動かない間に一斉に拠点を押さえるのです。多い時では数百人が関係各所へ押しかけます。朝の七時頃には待機していて、うずうずしているようです。

 

指揮を執る人間が踏込命令を出せば玄関のベルが押され、開けないとか不在の時でもお構いなしにドアを破壊して内部に侵入できるのです。

 

国税局は逮捕権を持つためです。業務の執行を妨害すると逮捕されてしまいます。突然訪問されたとき、驚いて証拠隠滅に走ればそこでアウト。

 

私の場合は、裏取りであったので事実を供述して証拠品まで抑えられて、証拠品といっても当時の領収書の押印した印鑑、取引書類の一切、銀行口座の通帳、家族分も含めて数十冊などなど。あとはパソコンのデータもすべて押収されます。

脱税案件では「3千万円」が逮捕のボーダーライン!?

警察官、国税局などは事前に数カ月に及び対象者の周辺調査から人物の一日の行動と誰に接触したか、いつどこで誰とどんな話をしたか、過去半年くらいは毎日張り込みが行われて逃亡されないように逃亡可能否範囲まではおさえるのが通常の段取りだそうです。

 

訪問直後には対象者に対して取引の時の状況を秒刻みで次々と質問、すべて記録されます。数百名が関係各所に同じ時間に同じ案件で動くということはそれだけ大きな事案ということなのです。

 

裏取りだけで、ここまで一言一句記録されると事前張り込みがいつ開始されたのか気になるところではあります。担当者は対象者がまるで犯人かのようにトイレまで附いてきます。ほぼ自宅だけで半日、今度は勤務先に向かい勤務先で同様に証拠集めをされます。

 

事務所までの移動は当然国税局の車です。自己所有の車は何台でどこに駐車しているかまで調べてあるのです。

 

調査は対面でおおよそ調査済の部分を裏付ける目的で行われるので向こうが調べていることと相違すれば再度再考を促されます。事実と異なることを言う必要もないのですが、記憶ははるか三年ほど前のことであったので部分的には間違うこともあり、もう一度考えるように促されて記憶の彼方を掻き回す。

 

こうして差し押さえられた証拠は、再び国税局の事務所に戻って証拠品ごとに調査されるのでしょう。証拠品が銀行通帳を含め、戻ってきたのはなんと三年後でした。

 

国税局の脱税案件では昭和の終わりころ3千万円ラインで逮捕するかしないかに分かれていたそうです。私の会社にもそんな担当者からのお達しがあったので脱税については全く興味がなかったのです。同業者の中には何とか脱税して稼いだ金を保持したいという人もいました。

 

日本人が日本に納めるお金はいずれ自分に返ってくることが理解できれば脱税の意味がないことがわかりますが、外国人にとってこれは立派な利益かもしれません。

 

何より我々日本人が利用できる日本銀行経由の資金はあまり利用してないように思えました。

不正は「自己利益」から一番遠い行為

脱税は不動産取引においては不可能です。

 

取引の段階で最初の金額が低ければ、税務署は調査を開始します。相場であれば問題ないでしょう。私は、不心得者とは取引しないという日頃からの信条を持っています。

 

今でこそ、反社会勢力との取引ができないことになりましたが、彼らが跋扈しているときは彼ら流の形態がまかり通っていたのです。

 

不動産投資では本人確認は本人の証明をもって行う。当たり前のようなことですが、免許書の名前と本人の名前が違う連中があと数年いるかもしれない。

 

資金は日本国から借りているということを自覚すること。総額が同じで国内の銀行を行ったり来たりしているだけなので一時的に自社の口座にあるという程度の感覚が正解である。人より多くのお金をもっていると思っているのは錯覚である。自分の口座に今あるだけです。

 

お金は日本国の領土に日本銀行から借りた資金です。購入時のお金の流れを見れば一目瞭然、銀行内口座を移動しているだけなのです。

 

不正は自己利益から一番遠い行為です。税金を払わないことを自慢する人を時々見かけます。もしくは「領収書の要らない資金があり、これを使うので安くして欲しい」といまだに申し出る輩がいますが銀行に預けられない、支払いに使えないお金をもらっても銀行の信用を落とすだけです。あなたは、絶対に関わってはいけません。

 

商売は人が儲かって初めて自分が儲かることこそ最良。

 

自分だけで商売が成立したと考えるのはまったくの勘違いです。売主がいて購入させていただく。買主がいて初めてその物に価値が付加されます。それを取り持つ人はもっとも尊敬すべき仲介業者です。

 

建築物なら建設業者が暑さ寒さの中で作ってくれたものであります。開発団地なら工事業者がせっせとブルドーザーを使って造成したものです。売り手と買い手だけで商売は成り立つものではないのです。利益を独り占めする人には〝次〟がないのです。

本連載は、2016年7月9日刊行の書籍『なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なりたい人だけが資産家になれる―やれば儲かる不動産の取得と売却方法教えます

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岡村 恭資

風詠社

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