国際通貨基金が押し出す政策
国際通貨基金(IMF)は、単一の政策金利を目指した通貨発行の方法に関する報告書の中で、米ドル依存からの脱却(脱米ドル化)の政策を前面に押し出している。
しかし、スリランカでは国民から外貨預金口座を減らすような要望はなく、脱米ドル化が最近の選挙や過去の選挙で議題に上がったことはない。
スリランカ、通貨政策の遍歴
IMFの「単一政策金利を維持するための流動性操作に関する技術報告書」では、「スリランカ中央銀行(CBSL)は、脱米ドル化を進め、自国通貨を促進する包括的な枠組みの一環として、外貨負債に対する法定準備率(SRR)を導入すべきだ」としている。
1979年、スリランカの国民は政府によって、ドル建ての銀行口座を持つ自由を与えられた(預金ドル化)。この政策は、中央銀行が行っていた流動性供給により経済が圧迫されていた状況を改善し、輸入制限や為替管理を緩和することで経済を開放する一環として実施された。
当初、ドル建ての銀行口座を持つことが許可されたのは海外労働者(非居住外貨口座)のみだったが、その後、国内の居住者にも許可された。
特に1980年代には、スリランカの中央銀行が発行する通貨が米ドルに対して価値を失い始めたため、多くの人々がドル口座を保持するようになった。この状況は、IMFの第二次改正によって信頼できる通貨の基盤が失われたことが一因であった。
その当時、中央銀行は外国為替市場への介入を含む多くの介入と、印刷した資金で農業や農村経済へ再融資することも行っていた。
また、1980年代は、スリランカはインフレの影響を受け、米国や英国が1970年代に経験した「スタグフレーション」よりも厳しいインフレに苦しんだ。このインフレは、連邦準備制度(Fed)が単一の政策金利を導入した後に金本位制が崩壊し、さらに1960年代の積極的な雇用政策が影響を与えたものである。
通貨政策がもたらす多大な影響
通貨が減価する際、いわゆる「通貨政策」により、特に食料やエネルギー価格が上昇し、労働者の給与の価値が失われ、低所得層の生活が困難になる。その結果、多くの人々が貧困に追いやられる。
さらに、銀行に預けた生涯の貯蓄もその価値を失ってしまう。
通貨が信用を失うと、資本流出が発生し、人々は通貨の価値に対する信頼を失い、為替市場にも影響が及ぶ。このような状況では、並行為替レートが形成され、「通貨政策」が続くと、正式な為替レートとの乖離が進行する。
通貨の信頼を回復するためには、非常に高い金利を設定する必要がある。これは経済活動や民間の信用を圧迫し、結果的に「経済安定の危機」を引き起こすことになる。
政策金利を引き下げた政府は、通貨危機によって選挙で敗北する可能性があり、また、経済安定の危機の最中に政権を握る政党も、特に通貨が引き続き減価する場合には権力を失うリスクがある。1978年以降、スリランカでも同様の状況が見られている。
繰り返されるインフレや通貨危機の下では、独裁政権のみが生き残ることができるのだ。
1980年代には、IMFの第二次改正による高いインフレと通貨減価が影響し、選挙の不正操作が一般的となった。このような経済的混乱は、信頼性の低下を招き、政策の健全性に疑問を持つ声が高まった。そのため、IMFの報告書では、外国通貨預金に対する法定準備率(SRR)を復活させるべきだと提言されている。
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