(画像はイメージです/PIXTA)

先祖伝来の古い実家を相続したのですが、すでに実家にはだれも住んでおらず空き家状態になっているケースはよく見かけます。そのような空き家を売却する場合、敷地の境界確定と測量が必要になるケースがあります。どのような状況で必要となるのでしょうか。また、実際の境界確定や測量の進め方についてもみていきましょう。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。

先祖伝来の土地の境界が確定せず…

横浜市内に住むAさんは、先祖伝来の古い実家を相続しました。不要なのでさっさと売却したいのですが、大変困ったことにお隣との境界があいまいで、「ここからここまでがうちの土地」「いいや、ここからここまでが…」と、祖父母の代からずっとやり合っており、関係が最悪になってしまったそうです。土地をスッキリ売却できるかどうかについて相談に来られました。

 

築年数が古い建物の敷地や、先祖代々相続されてきた土地の場合、最近購入した土地とは異なり、境界が確定されておらず、土地の面積が不正確な場合があります。

 

当然ですが、境界が不明確だと売買の際に問題となりますし、なにより、都市部での固定資産税や都市計画税は土地の面積によって決まるので、面積が間違っていれば税額にも影響します。そのため、正確な面積を知ることが大切です。

 

まずは土地の登記簿を確認したうえで「境界」をはっきりさせ、正しい面積を測るために「測量」をする必要があります。これらが完了すれば、安心して土地を売却することができます。

境界確定測量の「依頼先」と「費用の目安」は?

まずやるべきことは、現地に出向いて「境界標」の有無を確認することです。境界標がなければ、土地の境界確定の測量が必要です。

 

測量は、測量士や土地家屋調査士に依頼することになりますが、相続の場合、相続税申告や譲渡所得税申告に影響があるため、税理士とも連携することが必要です。

 

まずは仮測量を行い、測量者と土地所有者とで境界確定の話し合いをします。境界が確定すれば、確定測量が行われ、正確な面積が分かるので、境界標を設置できます。

 

測量する際には、隣接所有者との土地境界の話し合いに立ち会うことが必要です。また、土地家屋調査士が境界確定の測量後に作成した境界確定書には、依頼者が押印しなければいけません。

 

測量にかかる費用の例ですが、100m2程度の場合、土地の現況測量は10万~20万円、確定測量は40万~60万円程度が一般的です。ただし、役所との話し合いの立会いが必要な場合や、近隣トラブルで交渉が必要となる場合には費用が増えることもあるので、事前に見積もりを取っておきましょう。

 

境界確定後、測量図面や境界確定書面が作成され、それらをもとに、土地登記が行われます。

 

境界確定の測量や登記にかかる期間は、測量から登記完了までの期間は事案によって異なりますが、おおよそ3ヵ月程度が目安です。

境界線、隣地の所有者とモメてしまったら?

土地境界について、隣地の所有者と話し合いしても合意に至らないケースもあります。合意が難しい場合には「境界確定訴訟」と「筆界特定制度」という2つの制度が利用できます。

 

◆「境界確定訴訟」…裁判で決着、時間も費用もかかるのがネック

「境界確定訴訟」とは、裁判所で土地境界の決着をつけるものです。裁判所は原告と被告の主張にとらわれず、境界を確定します。境界の位置について判断できない場合でも、裁判所が判断して境界を決定します。

 

ただし、境界確定訴訟には時間も訴訟費用も相当かかるため、簡単ではありません。

 

境界確定訴訟は裁判であり、判決が出るまでに数年かかることもあります。費用についても、土地の鑑定費用、裁判官・書記官の実地検証費用、弁護士費用など、大きな負担となるでしょう。そのため、土地所有者にとっては必ずしも使い勝手のよい制度とはいえません。

 

◆「筆界特定制度」…法務局が管理する制度、早くて安価だが紛争解決への効果は…

最近では、境界確定訴訟より「筆界特定制度」を利用するケースが増えています。

 

筆界特定制度は、裁判所ではなく、法務局が管理している制度です。土地家屋調査士が実地調査を行って法務局に筆界特定を申請し、法務局が調査結果に基づいて土地の筆界を特定します。費用は比較的少なく、手続き期間は比較的短いですが、筆界特定制度はあくまで登記上の問題を解決するものであり、隣地所有者との紛争解決には必ずしも効果があるわけではありません。

 

◆筆界特定制度の注意点

筆界特定制度は、通常、申請から特定までの期間は6~9カ月程度、費用も100万円以下になるのが一般的で、訴訟よりも早く境界確定ができ、費用も軽減されることがメリットです。しかし、筆界特定制度はあくまで本来あった筆界を明らかにするだけで、行政処分ではなく、また、筆界を形成する力も持ちません。そのため、筆界特定後に境界確定訴訟が提起されると、別の位置に筆界が決まる可能性もあります。

 

とはいえ、実務上、筆界特定がされたあとに境界確定訴訟が提起されても、筆界特定の結果が考慮されるため、異なる結果になることはほとんどないようです。

 

筆界特定制度を利用する際には、まず、土地家屋調査士に依頼し、筆界特定の申請書を作成してもらいます。その後、申請書と必要な添付書類を法務局に提出します。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

★相続した不動産売却に必要な境界確定・測量についてはこちらをチェック!

「境界確定」や「測量」はなぜ必要なのか?空き家相続後の売却準備をしよう

 

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相続する土地評価額や相場価格・価値の調べ方や計算方法とは?

 

 

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