母の死、残された破天荒な父
山村総太さん(仮名/45歳)は、地方で自営業を営んでいます。総太さんには隣町に両親がいましたが、母が他界し、父の良一さん(仮名/72歳)だけが残されています。
良一さんは、若いころにロックバンドでドラムを担当しており、長年バーを経営して生計を立ててきました。生き方は破天荒で、総太さんが中学生のころにイジメに遭ったときには、授業中に学校まで乗り込んできたことがあります。酔っぱらうとこの「武勇伝」を大声で語りだす父のことが、総太さんは嫌いでした。
バーを経営しているのに自分ではお酒を作れず、お客さんと話をしたり、常連客と一緒に楽器を演奏したり、自由に楽しく暮らしていました。自宅でも自由奔放、亭主関白。母はそんな良一さんに文句もいわずにいたといいます。
総太さんは、そんな良一さんとはあまり関わりたくないと思っていました。しかし母の死後は、ひとりで暮らしている良一さんに対して心配な気持ちもあり、月に1回くらいは様子を見に行くようにしています。
親父はソツなく家事をこなしている…?
「親父一人きりで生活していけるのかな……?」心配をしていた総太さんでしたが、実家を訪れても家は片付いていて、冷蔵庫にはしっかりと食材があり、キッチンを覗いてみると調理した形跡もありました。
「どうやって生活してるんだろう……」実家に顔を出すたび、そんな疑問を抱いていた総太さん。とはいえ、目に見えて体調を崩しているような様子もない以上、わざわざ良一さんの生活事情に踏み込む必要はありません。「なんとか上手くやってるんだろう」と考え、あまり気に留めないようにしていました。
しかし、このときの判断が、後にまさかの事態を引き起こしてしまいます。
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