(※写真はイメージです/PIXTA)

今年80歳になったマサシさん。以前から相続対策を考えており、どのように行えばいいか相続に関する本を読みながら自分なりに準備をしてきました。そんな中、今年から相続税や贈与税の計算方法が変わったと聞き、また考えなおさなければならないのかとあせっています。CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、2024年に改正となった相続税や贈与税の内容や、今後相続対策を考えるうえでの注意点について解説します。

相続時精算課税制度とは?

マサシさんには妻と子ども2人がおり、所有財産には家と預貯金そして株式などの有価証券があります。特に株式は大きく値上がりしたものもあり、まとまった金額になっているとのこと。

 

もし自分が亡くなったときには、家と預貯金は妻に、そして有価証券は2人の子どもたちに均等に残そうと考えています。

 

そこで考えたのが相続時精算課税制度の利用です。相続時精算課税制度とは、通常年110万円以上の贈与を行った場合に、110万円を超えた部分が贈与税の課税となる暦年贈与と異なり、申告することで、その年からの贈与が2,500万円まで非課税になる制度です。そのため、年間110万円以上の贈与を行ったとしても、受け取った人に贈与税は発生しません。

 

そして、相続が発生したときには、相続財産に加算して相続税を計算する仕組みです。つまり贈与税の支払を先延ばしにする効果が得られるのです。

 

相続税精算課税を利用するメリットは、贈与を行った時点でその評価額が決まることです。そのため、これから値上がりする可能性のある株や投資信託などの運用商品を所有しているマサシさんは、まだ株価が低いうちに贈与することにより、相続時の評価額を下げられるメリットを享受できます。

 

相続時精算課税制度を利用するにあたって、贈与の回数や期間に制限はなく、基礎控除である2,500万円までなら何回も利用できます。ただし、2,500万円を超えてしまった場合は、超えた部分について20%の贈与税がかかる点に注意が必要です。

 

また、相続時精算課税制度の利用には以下の要件を満たさなければなりません。

 

・贈与者が贈与を行った年の1月1日の時点で60歳を超えている父母もしくは祖父母であること

・贈与を受ける人が、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳を超えている、推定相続人もしくは孫である

 

ただし、相続時精算課税制度を利用する際には税務署への届け出が必要であり、またいったん相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与に戻せない点にも注意してください。

 

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