(※写真はイメージです/PIXTA)

9月16日、米ドル円は去年7月以来となる「1ドル139円台」をつけました。今後さらなる円高進行、またこれによる国内株安が懸念されるなか、株式会社武者リサーチの武者陵司氏は「140円を超えての円高進行は考えにくい」といいます。その根拠について、詳しくみていきましょう。

リーマンショック以降中立金利が低下した「3つ」の理由

中立金利の目安となる実質FFレートの長期収束値はいまどのレベルなのか。前掲図表2により1990年以降の実質FFレートを振り返ると、2008年のリーマンショックを境に、大きくレベルが変わっていることがわかる。

 

1990年から2008年までの228ヵ月の平均実質FFレートは1.5%であった。しかし2009年以降2024年8月までの188ヵ月の平均は-1.25%と大きく低下して推移してきた。

 

リーマンショックを境に中立金利のレベルが劇的に変化したのである。そしていま再び実質FFレートが大きくプラスになっている。

 

この実質FFレートの推移は、NY連銀が試算する自然利子率の動きとも符合する。図表3により1960年以降の潜在成長率と自然利子率の推移をたどると、それまで完全に一致していた潜在成長率と自然利子率が、2009年以降大きく乖離し、自然利子率が潜在成長率(≒完全雇用成長率)を大きく下回り続けたことがわかる。

 

つまり完全雇用を実現するためには大幅な金利水準の引き下げが必要という時代が、10年以上にわたって続いたのである。

 

なぜ自然利子率(≒実質中立金利)が低下したのだろうか。多くの要因が指摘されているが、当社は以下3要因が重要と考える。

 

1.人々が過度に悲観的になり、リスクテイクに後ろ向きになった

2.先行き不透明感が強まり、高いリスクプレミアム(タームプレミアム)が求められた

3.企業・家計ともに借金需要が低下し、金利感応度が下がった(企業は自己金融力の高まり(=貯蓄の高まり)により、家計はリーマンショックの後遺症で借金に後ろ向きになったことにより)、である(注)

(注) 自然利子率の低下の要として上記3点に加えて、世界的過剰貯蓄による世界的実質金利低下、高齢化・生産性低下等による総需要低下、等も指摘されている。

 

この環境のもとでQE(量的金融緩和)が打ち出され、資産価格が押し上げられ、金利以外のチャンネルによる需要喚起策が導入されたのである。

 

出所:NY連銀、武者リサーチ
[図表3]米国潜在成長率と自然利子率推移(NY連銀による) 出所:NY連銀、武者リサーチ

 

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次ページFRBの利下げは限定的→さらなる円高進行は考えにくい?

※本記事は、武者リサーチが2024年9月16日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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