職場で高い知見や優れた能力を発揮し続けた人が「顧問」に就任するというケースは多々あります。しかし、顧問として現場で大活躍したという話はなかなか聞く機会がありません。現場で求められ活躍できる顧問になるには、どのような働きをすべきなのでしょうか。今回は、東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長・福留拓人氏が、Aさんの事例とともに、顧問の「理想の姿」について解説します。
3年間で数百億円の売上増・想定外の倒産危機も回避…「超レジェンド級顧問」の事例から学ぶ、現場が認める顧問の働き方【プロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

現場で必要とされない「顧問」という存在…

ビジネスパーソンとして高い知見を持ち、優れた能力を発揮してきた人物がハイキャリアになると、やがて「上がり」の立場になることを前回のコラムで指摘しました。

 

会社はその人物に「個人的なネットワークを活用して今後も力を貸してほしい」と声を掛けます。それに呼応して「顧問」に就任される方が増えています。

 

しかし、顧問として大活躍したという話はあまり聞くことがありません。企業側と顧問側の期待値にはギャップが大きく、なかなか難しいということは以前にお話したとおりです。顧問は何かと受け身になりがちで、アドバイザー的な立ち位置になりやすいのですが、現場はそういう人の必要性を感じていません。

 

ですから、自分で仕事を創出することが顧問として生き残る条件になっています。

機械部品メーカーの顧問に就任したAさん

今回は、私ども東京エグゼクティブ・サーチが関与して、顧問として大成功した事例をご紹介させていただきます。ここに登場する顧問を仮にAさんと呼ばせていただきます。

 

Aさんは某自動車メーカーの製造、設計、さらに営業とマルチに活躍され、最終的に役員まで登り詰めた方です。優秀ながら60代なかばで役員定年を迎えて退任しました。Aさんの活躍ぶりは業界内外でよく知られており、退任前から多くのオファーが殺到していたといいます。肩書や雇用形態は別にして、絶対に欲しい人材と考える企業も多かったようです。

 

そんなとき、ある機械部品メーカーがAさんを顧問として迎えることになりました。Aさんは退任後、複数の仕事を引き受けていますが、そのなかの1社がこの企業です。

 

ここでのAさんは大御所的な立場で相談に乗るのではなく、会社全体をくまなく観察しながら周囲とコミュニケーションを深めました。問題点を抽出したうえで自ら報告書をまとめ上げて経営陣に企画をプレゼンテーションするなど、顧問になってすぐの動きには目を見張るものがありました。

 

文章で読むと簡単に思えますが、こうしたことを初動で実行できる勇猛果敢な人は少ないのではないでしょうか。役職は顧問だから失うものは何もない、年齢的に偉ぶる必要もなく、貢献していこうという風に割り切って、ダイナミックに動かれたのでしょう。