特定の領域で活躍した人が「顧問」というポジションに就くケースは少なくありません。しかし、会社側はよかれと思って顧問にしても、現場はまったく必要としていないということもあるようです。どのようにすれば、現場で活躍する顧問になることができるのでしょうか。そこで今回は、東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長・福留拓人氏が、現場が求めている「顧問の役割」について解説します。
豊富なキャリアを買われて〈顧問〉になったものの、現場では「必要ない、むしろ邪魔」とお荷物に…活躍できる人材として生き残る方法【プロの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

現場は顧問を欲していない、むしろ邪魔になっている…

ある特定の領域で有識者として高い知見を持ち、優れた能力を発揮してきた人物がハイキャリアになると、やがて「上がり」の立場になるときが来ます。

 

会社側は、「これまでの個人的なネットワークを活かして引き続き力を貸してほしい」と声を掛けます。それに呼応する形で「顧問」というポジションに就かれる方が、シニアを中心に多くいます。このシチュエーションではいろいろなエピソードがありますが、本記事ではそういう方々が「生き残る方法」にピントを絞ってお話ししたいと思います。

 

結論から申し上げますと、顧問に就任されたら自分で仕事を創造し、自分で人脈を育て、実績を上げ続けて生き残るようにすることが重要です。

 

多くの方が勘違いされていますが、ここで一番やってはいけないこと、それは「待つこと」です。「自分は何か相談された案件に力を貸す役割だ」という思い込みをしてはいけません。顧問という肩書から受ける印象は確かにそうなのですが、待つことで生まれるものは何もありません。私どもTESCOは経験上いろいろなケースを見ていますが、自分から動かない顧問は平均して1年以内に辞めていきます。

 

顧問というポジションは、多くの場合、社長をはじめとするトップの方々がその役割をつくります。経営者側から「あなたのこういう知見について力を借りたい」と言われて引き受ける、ポジティブなケースもあるでしょう。そうかと思えば、「かつて取引上でお世話になったので、顧問として一定期間引き受けないと格好がつかない」というような、ポジティブとはいえない理由で引き受けている例もあります。

 

そこで共通しているのは、「現場は欲していない」ということです。実際に会社のオペレーションを担っている現場の管理職レベルでは、顧問は必要ない存在です。むしろ邪魔になっているのではないでしょうか。

 

顧問という役割の実情

顧問という役割に就いて最初の1ヵ月、2ヵ月くらいは、会社も本人もその状態が新鮮だということもあり、顧問が会社に出かけてミーティングを主催したり、会議に呼ばれたりします。そこでは「営業の開拓先を紹介してください」などと言われ、自分で実際に動いてみることもあるでしょう。

 

しかし数ヵ月が経ってみると、自分も周囲もそれほど顕著な業績が上げられないことに気づきます。そのうち顧問には以前のような頻繁な連絡は来なくなってしまいます。

 

そうなると、顧問が自ら会社に連絡を入れるようになります。「そろそろ打ち合わせをしたいのですが、いつが空いていますか」などと投げかけても、思ったように日程が上がってきません。「また連絡します」とか「その日は出張で都合がつきません」といったような対応が続くようになります。

 

顧問にも鋭い方・鈍感な方がいるものですが、数ヵ月経つと多少の感覚の差はあれど「自分は会社にそれほど求められていない」ということがわかってきます。そうなると関係は自然消滅し、1年の顧問契約で終了となるわけです。