人手不足でも幹部社員の採用基準は上がっている…一体なぜ?
前回のコラムで「人手不足の状態が続くと経営全般が蝕まれてしまう」というお話をさせていただきました。猫の手も借りたいほど人手を欲している会社が数多くあるわけですが、以前と比べると優秀な管理職も絶対的に人数が不足してきています。企業は優秀な幹部を求めているのです。
しかし、不思議なことに幹部社員の採用基準は緩むことなく、逆に引き締めが強くなっています。今回はその現象について考えてみようと思います。
最初に少し補足的になりますが、現場のスタッフにおける人手不足解消にあたっては、給料などの待遇をできるだけ改善することが重要です。ですから採用基準を大幅に緩和する形でスタッフを集めることになります。
企業の人事部門は血眼になって第一線に立つ現場スタッフの採用に取り組みます。その一方で、幹部社員に関しても注意を払わねばなりません。ビジネスを高いレベルでリードしてマネジメントを司ってくれる幹部もまったく足りていないからです。
いま採用に注力している会社というのは成長継続中の会社です。売上も、利益も、従業員も増えています。成長企業であるという前提があるのですが、会社をまとめることのできる優秀な幹部が不足しがちで、幹部社員も積極募集することになります。
先ほど申し上げたとおり、現場スタッフの採用では、人が足りないので基準を緩めました。ところが幹部社員を採用する場合は逆行して選考が引き締められ、基準が上がっています。
振り返ってみると、リーマンショックの前あたりまで企業は拡大期にありました。そこでは雇用流動性が高まり、転職市場が発展しました。中途採用で多くの幹部を雇い入れ、同業他社に長く在職している人材を招いて幹部に登用することが恒常的になったことがありました。
しかし、中途入社の人材が幹部としてすぐ新しい会社に馴染んで活躍する事例は思いのほか多くはありません。それを見て、企業も幹部社員の登用について学んだ面があると思います。