営業マンにとって非常に重要な「広告料」という要素
①広告料を支払う
まず、営業マンは基本的に給料にインセンティブが組み込まれています。売上を増加させなければ給料が増えない仕組みになっているのです。ですから売上を上げられるようにする。つまり、営業マンから紹介を受けるためには広告料を支払うということが基本になります。
彼らは、成約しても売上にならない物件は絶対に紹介することがありません。逆に、少しでも多くの広告料を提示すると優先的に紹介してくれるようになります。
当社は空室が多い物件には、3カ月分の広告料を支払うケースもあるのですが、すごい勢いで紹介を受けすぐに満室になってしまうことも多々あります。さらには、相場よりも高い賃料で成約するケースもあります。いかに広告料が重要かということがおわかりいただけるでしょう。
営業マンは、広告料を多くもらえれば、高い家賃でも決めるように入居希望者に一生懸命紹介するということです。広告料というのは営業マンにとってこれだけ重要な位置付けなのです。広告料を支払うことは入居希望者を紹介してもらう上での必須条件と言えるでしょう。
また、広告料は入居者獲得のためのコストです。リフォームにお金をかけるよりも広告料に資金投下したほうが、費用対効果が高いケースが多いのが実情です。
②営業マンに手間をかけさせない
営業マンは日々時間に追われており、無駄な時間を取られることを嫌がります。無駄なことに時間を取られれば自分の売上が確保できないからです。そのため、明らかに汚くて入居希望者に嫌われるとわかっている部屋は案内しても無駄に終わりますので、いくら広告料が高くても紹介しません。
逆に、案内して特に説明しなくても入居希望者に気に入ってもらえる部屋は、営業マンも薦めやすいのです。入居者受けするということは、営業マン受けするということなのです。
そのためには、次の【ステップ3】でお話しするような入居者受けする部屋(=営業マン受けする部屋)を作ることが大切です。また、案内から契約までの手続きが簡略化されていることもポイントです。たとえば、物件の鍵が管理会社にあって取りに行かなければ案内できないような物件は敬遠されます。なぜなら手間がかかるからです。また、契約書が複雑で入居希望者に説明できなかったり、特殊な文言が入っていたりするのも敬遠されます。
さらには、入居後のクレーム対応も重要です。入居者が入居した段階での部屋の不具合等に関するクレームは、まず営業マンに行きます。そのクレーム対応を営業マンは非常に嫌がります。時間ばかり取られるので当然です。極端な話、クレームの多い管理会社やオーナーの物件には今後入居希望者を紹介しないと言われてしまうこともあるぐらいです。クレームが起こらない体制を作ることと、万が一クレームが起こったときには迅速に対応することが求められます。
とにかく、物件紹介から案内、契約、入居後のフォローまで、いかに営業マンに手間をかけさせない仕組みを構築するかが重要になります。
広告料の支払いは「十分条件」ではない
③営業マンとの人間関係を構築する
広告料の重要性をご説明いたしましたが、広告料さえ払えばよいのかと言えば、必要条件だけれども十分条件ではないというのが答えでしょう。なぜなら、他のオーナーさんやPM会社も同じように広告料を払ってくることがよくあるからです。
つまり、広告料だけでは完全な差別化要因にはならないということです。その差別化要因として営業マンとの人間関係構築の重要性が挙げられます。営業マンも人間ですので良好な人間関係を構築している人と取引をしたがります。
まして上から目線で「広告料を払うんだから言われた通りに紹介しろ」という態度のオーナーさんは嫌われます。実際、そのような態度のオーナーさんに頭にきて、その場でオーナーさんが持ってきたマイソクを破り捨てたという営業マンの話もあります。
では、賃貸仲介の営業マンとどのように付き合いを深めていけばいいのでしょうか?
現金を個人的にあげればいいのでは? 接待してたくさんお酒を飲ませればいいのでは?など、いろいろな考え方があるかと思いますが、結局のところ、これといった正解はありません。営業マンの立場は様々ですから、会社や周囲の人などをよく観察し、その立場を理解した上でそれぞれの対応を考えることが重要でしょう。
個人としての売上を上げなければいけない立場なのか、店全体の売上が重要なのか、それとも個人的なインセンティブ(お小遣い)を求めているのか、はたまた飲みに行くのを求めているのか。相手の立場、求めているものに対して、適切な訴求をすることが重要になることは言うまでもありません。
たとえば、会社として個人へのインセンティブを半ば公に認めているような賃貸仲介会社があります。このような場合には積極的に個人へのインセンティブを支払うべきでしょう。そのインセンティブが営業マンにとっての重要なモチベーションになるからです。この場合、広告料(会社に支払う)は抑えても、その浮いた分を個人に支払う形を取ります。
反対に、会社として個人へのインセンティブは一切禁止しているケースも多々あります。特に大手のチェーン店系仲介会社は、ほとんどが禁止です。このような場合、無理やり個人に対する報酬を渡すことは、相手に対して、クビになってしまうかもしれない大きなリスクを負わせることになります。迷惑が予想されるばかりで、せっかくの厚意が仇になってしまいます。そのような場合には、たとえば年末時期に食事に(飲みに)誘ったりするのが有効な方法です。また、当社のリーシングマネジメントの担当者の事例では、ゴルフが好きな営業マンとゴルフに行ったりして親睦を深めています。
いずれにしても、相手の状況をよく理解した上で付き合う必要があります。ここでもう一つ問題となるのが、どのような営業マンが優秀であるのか、という点です。長い時間をかけて付き合えば、その実績が自ずからわかってくるでしょうが、初めのうちはわかりません。当社が試している方法には、まず賃貸状況のヒアリングを行った段階で、そのエリアの物件がどれだけ頭に入っているかを見る、というものがあります。
これは、単純な話ですが、できる営業マンほど取引実績が豊富ですから、エリアの物件情報に精通しているわけです。どこどこの物件がいくらで募集していていくらで決まったか、この物件はなぜこの条件で決まるのか(決まらないのか)等々、そのエリアの物件にまつわる取引事例がポンポン出てくるような営業マンは、基本的に優秀であると言ってよいでしょう。
逆に、聞いてもはっきりと取引事例が出てこなかったり、インターネットのアットホーム(不動産情報サイト)から探し出そうとしたり、といった営業マンでは、力量は期待できないと判断するのが無難です。