多くの日本の企業が直面している「人材確保」の問題。なかでも、大・中企業が元請け会社となり現場で働くのは曾孫請けであったり、複数の派遣会社を介して作業員と契約を結んだりすることも日常茶飯事である「解体業など現場仕事」では、さまざまな弊害も生まれています。今回、人材確保に奔走する、ある解体業経営者が経験した苦労についてみていきます。※本記事で紹介している事例は、事案特定を防ぐため設定等を変えています。

キャリアは申し分なし!一応、バックグラウンド調査をすると

人材確保に奔走するK氏。すると今冬にこんな応募が。

 

一緒に仕事をしたことがある人からK氏の名前を聞いたといって応募してきたF氏は30代。高校中退してから、一時期体を壊していたとのことで数年のブランクはありますが、経験も腕も十分です。腕に刺青はありますが、それはこの業界ではそんなに珍しいことではありません。面接したところ人柄もよさそうで、ちょうど複数の案件を抱えていたK氏としては、そのうちの一つのメインメンバーとして、そして末はプロジェクトリーダーとしてF氏に活躍してもらいたいと考えたのです。

 

以前ならそのまま採用となったのですが、たまたまその案件が官公庁も絡む高いセキュリティを要するものであったことから、K氏はF氏について採用時バックグラウンド調査を行うことにしました。その内容は、反社チェック、犯罪歴、金融ブラックチェック、そして以前の職場にF氏の仕事ぶりを確認するリファレンスチェック、SNSチェックです。

 

調査結果を手にしたK氏は、思わずため息をつきました。F氏は職人としての腕には定評があったものの、過去に指定暴力団に属しており、仕事を離れていた数年間は、体調不良でのブランクではなく、執行猶予がつかない重犯罪での服役期間だったのです。また、いまだに反社関係者との繋がりも切れていないことも明らかになりました。これでは今回の案件に携わらせるわけにはいきません。

 

F氏の採用を見送ったK氏ですが、その後も、面接に来た若者が関東でも有名な半グレのメンバーと非常に親しかったり、若手作業員1名が他の作業員と喧嘩になった際に、「俺の兄は暴力団員だ」などと契約元から派遣されている現場監督の前で口走り大問題になったりするなど、この問題に絶えず頭を悩まされています。いっそ、もう反社でも採用してしまおうかという考えがチラッとよぎることもあるそうですが、同業の現場で違法薬物が蔓延し、その出所がやはり反社絡みの作業員だったという話を聞くと、今後も会社を発展させ、ともに頑張ってきた仲間や地元に貢献したいK氏としては、みすみす毒を飲むような行為は避けたいのです。

 

人手不足が深刻ななか、K氏がつぶやいたように、いっそコンプライアンスを無視したい衝動に駆られる経営者や採用担当者もいるでしょう。しかしながら、万が一、情報漏洩、事故、顧客の損失、炎上などの問題が起きたらどうなるか。採用・雇用・監督責任は誰が負うのか。賠償額はどれくらいになるのか。それを考えたとき、あまりにもリスクが高く、すでにギリギリの線で頑張っている中小企業が持ち堪えるのは困難かもしれません。そのための保険として、少なくとも明らかに不安が残る人物の採用を避けることは、実は中小企業にこそ必須だと考えられます。

 

 

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