権限委譲による「寂しさ」は、組織が前に進んでいる証拠
若手経営者の言うことを素直に聞いて、組織改革に乗り出した川口社長。「みんな戸惑うだろうな」と心配していたのですが、副社長をはじめ、社員たちは行きつ戻りつしながらも、むしろイキイキとしてビジョンの策定、経営チームの立ち上げ、さらには組織化を推進してくれました。その姿を見て、彼はみんなが何を求めていたのかをおぼろげながら理解していきます。
組織構造の基礎ができ、権限委譲が進められると、これまで社長が行っていた仕事が次々に各部署へと割り振られていきました。最初のうちは、自分の持ち物が取られていくような寂しさを味わっていた川口社長も、徐々に人に分け与えることの快感を覚えはじめます。そして会社が、まるで1つの生き物のように、形成されていくのを感じました。
業績への反映はこれからですが、少なくとも、社員はこれまで以上に元気になり、社内が活気に満ち溢(あふ)れるようになったのは事実です。自分が現場にいなくても、社員たちは自由に働き、会社はあるべき方向へと進んでいく。その姿を見て川口社長は、言葉にできない感覚を抱きました。フロアを離れて、若手経営者に電話で現状を報告します。
「ああ、それはね、一種の疎外感のようなものでしょう。心配しなくても大丈夫。組織の構築と権限委譲がうまくいっている証拠です。これまでは全部自分でやってたんですから、疎外感があるのは当然でしょう。中小企業の経営者あるあるです。でもね、勝負はここからですよ。これから本当の”社長業”がスタートするんですから」
久能 克也
株式会社オプティ 代表取締役
EOS JAPAN合同会社 代表
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