借地人が勝手に「借地権譲渡」して大トラブルに発展…「借地権の相続税を払った」と主張する借地人に、地主は「そんなの関係ねー」と大激怒、はたしてその結末は?【税理士が解説】

借地人が勝手に「借地権譲渡」して大トラブルに発展…「借地権の相続税を払った」と主張する借地人に、地主は「そんなの関係ねー」と大激怒、はたしてその結末は?【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

地主と借地人の間で、借地権の譲渡をめぐってトラブルになることがある。借地人が借地権割合で算出した相続税を支払ったことで借地権を主張し、地主の承諾を得ずに勝手に借地権を第三者に譲渡してしまうのだ。地主は古い借地権契約では契約当初に権利金をもらっていない。しかし、地主と借地人が裁判までいかずに折り合いをつけるため、地主はこれまで借地権譲渡対価の10%程度の譲渡承諾料をもらって泣き寝入りすることが多かった。足掛け3年をかけ、もらってもいない借地権利金を取り戻した事例を元国税査察官の上田二郎税理士が解説する。

地主の承諾なしに借地権を譲渡?

国税庁が公表する路線価図には借地権割合が表示されている。

 

相続した建物が借地上にあれば、その自用地価格(自分の土地である場合の評価額)に借地権割合をかけて評価額を算出する。路線価による評価額が1億円で借地権割合が70%なら、借地権評価額は7,000万円になる。

 

この借地権割合がひとり歩きしているように思えてならない。

 

「相続税を納めたのだから自分のもの」と、地主の承諾を得ずに借地権を譲渡する者が現れ、地主とトラブルになっている。

 

ここで理解を深めるために、借地権の変遷を簡単におさらいしたい。

 

借地権は、建物を所有するために土地を借りる権利だ。大正10年に制定された借地法(旧借地法)では、借地契約期間(法定期間)が満了しても、未だ借地上に建物が朽廃せずに存続していれば、借地人は地主に対して更新請求をすることができるとされ、地主が更新に応じない場合、借地人は地主に対して建物の買取請求権を行使できることとした。

 

これによって、地主は建物を買い取りたくない場合には契約を更新せざるを得なくなった。

 

その後、昭和16年に旧借地法の一部を改正し、借地期間が満了しても建物が朽廃せずに残っていれば、地主がその土地を自ら使用するなどの正当な事由がない限り、借地契約は自動的に更新される「法定更新制度」が導入された。

 

この改正によって、借地権の物権化が強く意識されるようになり、地主はいったん借地権を設定すると、土地を取り戻すことが事実上困難になった。

 

さらに、昭和41年には地主の承諾に代わる裁判所の許可制度が導入され、借地権の譲渡または転貸を地主が承諾しない場合でも、裁判所が地主に代わってその譲渡に許可を与えることができるようになった。

 

これによって借地権の物件化がさらに進み、いったん土地を貸すと相続などによって借地権者が代わっても地主側から借地契約の解除をすることができず、結果として半永久的に土地が戻ってこないことになった。

 

このように、土地の賃借権を規律する法律はさまざまな改正を経て、強固になりすぎた借地人の権利をより柔軟にするべく、平成4年8月から現在の「借地借家法」が施行されるに至った。

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