認知症の義母に続き義父も…壮絶な介護生活
10年前、義母が認知症を発症し、介護生活が始まった坂本さん(仮名/60歳・女性)。最初は軽度の物忘れや混乱といった初期症状だった義母の認知症も、次第に進行し、「食事をとったことを忘れる」「夜中に徘徊する」「家族や場所を認識できなくなる」といった状態に。坂本さんは当時を振り返り、次のように語ります。
「夜中に起き出して家中を徘徊する義母への対応で、ほとんど眠れない日々が続きました。体力的にも精神的にも限界を感じていました」
さらにその5年後、義父が脳梗塞を発症し、要介護状態に。リハビリや日常生活全般のサポートが必要になり、坂本さんの負担は倍増しました。
「義父の介護が加わったことで、休む時間がほとんどなくなりました。自分の健康もどんどん悪くなり、このままでは持たないと感じました」
介護には体力や精神力だけでなく、多額の費用がかかります。坂本さんは、介護保険を利用しながらも自己負担分が家計に重くのしかかり、将来への不安を抱えていました。
「毎月の介護費用が家計を圧迫しました。介護保険の自己負担分だけでもかなりの額で、老後の生活費が足りなくなるのではと不安でした」
介護疲れがピークに達した坂本さんは体調を崩し、医師から「このままではあなたが倒れる」と警告を受けます。家族とも相談し、ついに義両親を老人ホームに入居させる決断をしました。
坂本さん家族は、事前にある程度の資金計画を立てていたため、適切なタイミングで決断することができました。老人ホームへの入居には費用がかかるものの、介護保険や高額介護サービス費の支給を活用し、経済的負担を軽減できたと語ります。
「親不孝だと言われることも覚悟しましたが、自分が倒れたら誰も義両親の面倒を見られなくなる。それを避けるための最善の選択だったと思います」
特別養護老人ホーム(特養)は比較的費用が抑えられるものの、入居待ちが多く、利用できるまでの間は短期入所施設を活用しました。また、民間の老人ホームでは入居一時金として数百万円、月額費用として数十万円が必要なケースもあり、事前の資金計画が重要です。