株価や企業利益が好調な理由
第一に物価上昇により名目GDPが拡大した、第二に海外からの所得収支黒字が大きく増加したからである。企業利益も株価も税収も名目所得に連動するのであるから、それらが好調なのは道理に合っている。
この好調な業績・株価と低調の実質消費との乖離は、今後どうなっていくのだろうか。武者リサーチは実質GDPと消費が成長率を高め、名目成長に追いついていくと予想する。
第一の理由は2024年後半以降の日本経済は数量景気が顕著となるからである。
これまでの消費低迷の一因は円安によるJカーブ効果にあった。Jカーブ効果による円安初期の価格面でのマイナス場面は2024年1~3月期で終わり、すでに数量増の乗数効果が表れる時期に入っている。円安で日本の価格競争力が強まり、工場の稼働率が高まっているのだ。
また、割高になった輸入品の国内生産代替が起きている。円安はまた、インバウンドを増加させ、外国人観光客が日本の津々浦々の地方内需を刺激。安いニッポンに向かって、さまざまなチャンネルを通じて世界の需要が集中し、国内景気を活性化している。企業の国内における設備投資意欲は急激に高まっているといえよう。
政策投資銀行による大企業の設備投資調査では2024年度は製造業で24.7%増、全産業で21.6%増と過去最高レベルの伸びとなっている。
円安効果に加えて日本政府による合計4兆円に上る半導体支援が佳境に入り熊本、北海道、北上、広島などで投資ブームが起きていること、日本でも遅れていたEV投資が高まってきたことが推進力になっている。円安定着が確信できれば、企業はより国内投資に本腰を入れるだろう。
第二にJカーブ効果の初期に打撃を受けた家計の実質所得が回復し始めた。30年ぶりの5%という大幅な賃金上昇率に加えて、インフレが沈静化している。
2022年以降の国際的インフレ(エネルギー価格、およびサプライチェーンの混乱による)は完全に終焉した。また急速な円安もほぼ一巡した。GDPデフレーターは2023年1~3月に前年比5%まで上昇したが、2024年4~6月は3.0%まで低下している。
物価変動の影響を除いた実質の雇用者報酬は2024年4〜6月期に前年同期比0.8%増と21年7〜9月期以来11四半期ぶりにプラスとなった。家計消費は力強さを高めていこう。
2024年4~6月期の実質GDPは年率3.1%でG7の中で最高の伸びとなったが、日本の相対的な好調さは今後も続くだろう。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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