国民の生活はほとんど改善されていないが…10年間で株式時価総額が3.3倍増加している「日本経済」の謎【経済の専門家が解説】

国民の生活はほとんど改善されていないが…10年間で株式時価総額が3.3倍増加している「日本経済」の謎【経済の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本はこの10年で、企業利益は2倍以上、株式時価総額は3倍以上にも増加しました。一方、個人の生活はほとんど改善されていないように感じます。それはいったいなぜなのか、株価と日本人の生活の乖離について、株式会社武者リサーチの武者陵司氏が詳しく解説します。

株価や企業利益が好調な理由

第一に物価上昇により名目GDPが拡大した、第二に海外からの所得収支黒字が大きく増加したからである。企業利益も株価も税収も名目所得に連動するのであるから、それらが好調なのは道理に合っている。

 

出所:内閣府値武者リサーチ
[図表2]GDPデフレーターと前年比 出所:内閣府値武者リサーチ

 

この好調な業績・株価と低調の実質消費との乖離は、今後どうなっていくのだろうか。武者リサーチは実質GDPと消費が成長率を高め、名目成長に追いついていくと予想する。

 

第一の理由は2024年後半以降の日本経済は数量景気が顕著となるからである。

 

これまでの消費低迷の一因は円安によるJカーブ効果にあった。Jカーブ効果による円安初期の価格面でのマイナス場面は2024年1~3月期で終わり、すでに数量増の乗数効果が表れる時期に入っている。円安で日本の価格競争力が強まり、工場の稼働率が高まっているのだ。

 

また、割高になった輸入品の国内生産代替が起きている。円安はまた、インバウンドを増加させ、外国人観光客が日本の津々浦々の地方内需を刺激。安いニッポンに向かって、さまざまなチャンネルを通じて世界の需要が集中し、国内景気を活性化している。企業の国内における設備投資意欲は急激に高まっているといえよう。

 

政策投資銀行による大企業の設備投資調査では2024年度は製造業で24.7%増、全産業で21.6%増と過去最高レベルの伸びとなっている。

 

円安効果に加えて日本政府による合計4兆円に上る半導体支援が佳境に入り熊本、北海道、北上、広島などで投資ブームが起きていること、日本でも遅れていたEV投資が高まってきたことが推進力になっている。円安定着が確信できれば、企業はより国内投資に本腰を入れるだろう。

 

出所:武者リサーチ
[図表3]Jカーブ効果 出所:武者リサーチ

 

第二にJカーブ効果の初期に打撃を受けた家計の実質所得が回復し始めた。30年ぶりの5%という大幅な賃金上昇率に加えて、インフレが沈静化している。

 

出所:武者リサーチ
[図表4]政策投資銀行 大業設備投資調査 出所:武者リサーチ

 

2022年以降の国際的インフレ(エネルギー価格、およびサプライチェーンの混乱による)は完全に終焉した。また急速な円安もほぼ一巡した。GDPデフレーターは2023年1~3月に前年比5%まで上昇したが、2024年4~6月は3.0%まで低下している。

 

物価変動の影響を除いた実質の雇用者報酬は2024年4〜6月期に前年同期比0.8%増と21年7〜9月期以来11四半期ぶりにプラスとなった。家計消費は力強さを高めていこう。

 

2024年4~6月期の実質GDPは年率3.1%でG7の中で最高の伸びとなったが、日本の相対的な好調さは今後も続くだろう。

 

出所:各政府機関発表より武者リサーチまとめ
[図表5]主要経済指標、アベノミクス以降の推移 出所:各政府機関発表より武者リサーチまとめ

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

注目のセミナー情報

​​【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』

 

【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!

 

​​【事業投資】11月28日(木)開催
故障・老朽化・発電効率低下…放置している太陽光発電所をどうする!?
オムロンの手厚いサポート&最新機種の導入《投資利回り10%》継続を実現!
最後まで取りつくす《残FIT期間》収益最大化計画

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本記事は、武者リサーチが2024年8月19日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録