(※写真はイメージです/PIXTA)

ソニー生命保険「シニアの生活意識調査2023」によると、全国のシニア(50歳~79歳)の楽しみは1位が「旅行」でした。定年まで頑張って働いた人ほど、リタイア後は悠々自適に暮らしたいと考えるもの。しかし、老後には“想定外”がつきものです。まじめな元・警察署長に起こった事例をもとに、老後生活の注意点をみていきましょう。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが解説します。

“ちゃんと観戦しなきゃ”…まじめなAさんを襲った悲劇

Aさんは、「せっかく買ったシーズンシートだし、ちゃんと観戦して元を取らないとなぁ」と、暑い日も寒い日も、スタジアムに通い詰める毎日を送っていました。そのため生活リズムも乱れ、体力的にも少々無理をするようになっていました。

 

別々に暮らす娘のCさんは、そんなAさんのことを懸念し、会うたびに「お金もかかるし、体力的にも大変だし、ほどほどにしてね」と釘を刺していました。

 

しかし、Aさんは「楽しみが他にないんだし、退職までずっとスタジアム観戦を我慢してきたんだからいいじゃないか。俺は警察で身体も鍛えてきたから大丈夫だ」といい、どんどんと野球に夢中になります。

 

そんな生活を3年近く続けていたある日、Aさんは脳梗塞で倒れてしまいました。これまでの無理もたたったようです。幸い命に別状はありませんでしたが、入院や通院等により、しばらくは野球観戦ができずにいました。

 

やがて少しずつ元気を取り戻し、体力が戻ってきたAさん。ファンの仲間たちからも「Aさんがいなきゃ寂しいよ」などと連絡があり、Aさんとしても「また試合を観に行きたいなぁ」と、観戦に復帰するつもりでいました。

 

そんな父親の様子を心配したCさんは、今後の家計について尋ねました。それまで家計のことを話す機会はありませんでしたが、Aさんは貯蓄などを確認し、Cさんに状況を伝えます。

 

すると、3年間でチケット代、グッズ代、旅費交通費、交流会費など野球のお金以外にも、病気になってからの入院・通院費など含めて大幅な支出が発生し、貯蓄は65歳のときよりも1,000万円ほど減っていたことが明らかになったのでした。

 

それを知ったCさんはAさん以上に驚愕します。

 

「医療費の発生は仕方ないけど、3年で1,000万円も減らすなんて……お父さん、こんな調子で今後ちゃんと生活していけるの!?」

 

父親の将来が心配になったCさんは、Aさんを連れてFPに相談に訪れたのでした。

 

次ページFPからの助言→Aさんに起こった“嬉しい誤算”

※個人情報保護のため、登場人物の情報は一部変更しています。

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