(※写真はイメージです/PIXTA)

長寿大国の日本では“長生きリスク”という言葉も生まれるほど、老後の期間が延びています。定年後は現役時代のような収入が望めない以上、家計の変化には細心の注意を払わなければなりません。しかし、それでも、老後のマネープランが崩れてしまう原因は思わぬところに潜んでいるものです。具体的な失敗事例をもとに、株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが解説します。

定年後の“穏やかだがハリのない生活”に飽きてきて…

数ヵ月前に定年退職となった65歳の孝雄さん(仮名)は、月に約17万円の年金で暮らしていました。月17万円では、生活費のほかに月々の税金と社会保険料を支払うだけで精一杯です。

 

退職して時間はたっぷりあるものの、収入は年金のみ。家計に余裕はありません。そのため、週に5日は図書館へ入り浸り、さまざまな本を読んで時間を潰していたといいます。

 

孝雄さんはもともとゴルフや釣り、旅行など、アクティブで多趣味な人だったこともあり、穏やかながら緊張感のない毎日に飽きてきました。しだいに「もっと刺激が欲しい……月々の収入がもう少し多ければなぁ」という思いが強くなっていったそうです。

 

そんなある日、サラリーマン時代の同僚とご飯に行った際、その同僚から株で儲かってゴルフクラブを新調したという話を聞いた孝雄さんは「あいつが上手くやれるんだったら自分にできないわけがない」と考え、これまでまったく興味のなかった投資を始めることにしました。

 

退職金の2,000万円は「もしもの時のために」と手を付けていなかった孝雄さん。金融機関の営業担当者から「その2,000万円に働いてもらいましょう。預金に置いておくよりもお金の寿命が延びますし、儲かった分を分配金として受け取れば、年金の足しになるので思う存分趣味にお金を使えますよ」と魅力的な提案を受けました。

 

すっかりその気になった孝雄さんは、これまで投資経験がなかったにもかかわらず、退職金の2,000万円を使って「毎月分配型」と「隔月分配型」の投資信託を購入しました。本来はすべて毎月分配型にしたかったものの、新NISAでは毎月分配型の投資信託が対象から除外されているため、仕方なく隔月分配型の投資信託も購入したそうです。いずれもハイリスク・ハイリターンのファンドとなっています。

 

「こういうことは思い切りが大事だから」と自分に言い聞かせ、一気に2,000万円投資した孝雄さんは「これで自分も投資家の仲間入りだな」と満足げな様子。営業担当者がシミュレーションしてくれたとおり、年金すら不要に感じるほどの金額が毎月口座に振り込まれるようになり、孝雄さんは大満足でした。しかし……

 

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※個人情報保護のため、登場人物の情報は一部変更しています。

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