(※写真はイメージです/PIXTA)

データ越しに顧客とコミュニケーションをとることが当たり前になった現代。多様なニーズやそれに見合う経営戦略のために、顧客とコミュニティを形成し一種のファンダムのような状態を目指す「コミュニティドリブン経営」が注目を集めています。本記事では『コミュニティドリブン経営 ファン起点で広げるビジネスの新潮流/著者:小父内信也氏』(幻冬舎)より一部抜粋し、株式会社SUBARUのコミュニティ活用術を対談形式でご紹介します。

「新規顧客獲得」と「顧客のロイヤル化」を重視

小父内 社会的背景として少子高齢化や若者の自動車離れなどもありますが、SUBARUさん全体のマーケティング戦略とはどのようなものなのでしょうか?

 

安室 前提として、大手自動車メーカーと我々の戦い方は違います。少子高齢化や若者の自動車離れなどの影響を受けやすいのは大手自動車メーカーのほうです。たとえばトヨタ自動車を例に挙げると、販売台数も店舗数も働いている人数もSUBARUの10倍以上の規模があります。SUBARUの自動車シェアはグローバルで見ると1%、国内だと4%程度です。

 

そのため、我々にとって重要なのは「アクイジション」(新規顧客を獲得すること)です。SUBARUを愛している人々の愛称として「スバリスト」という言葉がありますが、たしかに一部のお客様はずっとSUBARUの自動車を購入し続けてくれており、非常に目立つ存在となっています。

 

しかし、SUBARUに乗ったら全員が「スバリスト」になるわけではありません。そのため、なぜ「スバリスト」のようなロイヤル顧客が生まれるのかを徹底的に理解する必要がありました。

 

いくつかの仮説を立てた上でお客様にヒアリングしながらデータを集めていきました。そのうちのひとつが長距離を運転するとSUBARUの良さがわかるというものです。SUBARUは低重心で、ステアリングの遊びがそれほど多くないことから長距離を運転しても肩が凝らないような構造になっています。

 

実際にデータを見比べると、2台以上乗り換えていただいているお客様とそうでないお客様とでは走行距離が全然違うのです。そのことからも、長距離を運転するお客様はロイヤル化するということが判明しました。実際に都内から九州まで運転したお客様から「全然疲れなかった」という声をいただいたこともあります。他にも来店頻度が高いお客様がロイヤル化する傾向が高いことも分かっています。

 

小父内 走行距離が伸びると、ロイヤル化するというのは、面白いですね。なぜ、来店頻度が高くなると、ロイヤル化しやすくなるのですか?

 

安室 来店頻度が高いお客様は車に対する愛着が強く、たとえばコーティングを追加したり、新しいパーツをつけたりするケースが多いですね。お店に来ていただく頻度が高くなると、店舗との結びつきが強くなりますし、さらに車に対する愛着が湧き、どんどんロイヤル化していきます。次の乗り換え時にもSUBARU車を選んでくれる人が多いですね。

 

小父内 ブランドとの接触が増えると、ロイヤルティも向上しやすいのですね。

 

安室 そのような顧客理解を定量と定性の両面から進めていきましたが、その中で見えてきたのが安全性です。SUBARU車を購入した方で、次にSUBARU車を選ばないお客様はSUBARU車の安全性を正しく認知していない場合が多いです。

 

それもそのはずで、SUBARUの車に搭載されている、主に先行車への追突の回避支援を行う「プリクラッシュブレーキ」という機能は本来使われないほうがいいんですよね。その一方で、不幸にも事故に遭われたお客様はSUBARU車の安全性を実感し、SUBARU車以外は買いたくないということをおっしゃる方もいます。

 

小父内 たしかに「安全性」は体感しづらい性能のひとつですよね。そのなかで、お客様は車を購入するときにどのようなポイントを重視しているのでしょうか?

 

安室 実際に車の購入を検討している方に重要視しているポイントを聞くと、デザインや機能性などを挙げられる方もいますが、安全性を挙げられる方も多くいます。ですが、安全性の高い車と聞いてSUBARUをイメージしていただけないお客様もまだまだ多いのが現状です。最近ではテレビCMなどを通して発信はしているのですが、やはり安全性を訴求することがロイヤル化につながるし、新規顧客の獲得にもつながるということが分かってきました。

 

SUBARUの店舗では車の試乗の際、お客様に「プリクラッシュブレーキ」を体験していただくことができます。試乗で実際にその体験ができるのはSUBARUだけです。その試乗がきっかけで、SUBARU車の購入を決めてくださる方も数多くいらっしゃいます。これは私たちにしかできない強みだと考えています。

 

小父内 体験を通して、真のSUBARUさんの価値に気付くわけですね。他にも、安全性へのこだわりがあれば、ぜひ教えてください。

 

安室 すべての車種ではないですが、「エクシーガ」という車種では左側のドアミラーが1センチだけ前に出ています。特に女性に多いのですが、内輪差で障害物にぶつけてしまうケースがあります。そのような事故をなくすために、左側のドアミラーを1センチ前に出すことで運転席からの死角をなくしています。

 

小父内 1センチへのこだわりは、そのまま安全性へのこだわりですよね。そこまで運転する人のことを考え抜いているからこそ、体験すると大きな驚きに包まれるのでしょうね。

 

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※本記事は『コミュニティドリブン経営 ファン起点で広げるビジネスの新潮流』(幻冬舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

コミュニティドリブン経営 ファン起点で広げるビジネスの新潮流

コミュニティドリブン経営 ファン起点で広げるビジネスの新潮流

小父内 信也

幻冬舎

「コミュニティを制すものはビジネスを制す。」 顧客と企業をつなぐ「コミュニティ」形成の有効性・活用法を、大手企業を中心に200社以上へのコミュニティ導入実績を持つ筆者がノウハウとともに解説。 ★コミュニティ…

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