(※写真はイメージです/PIXTA)

チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。

 

●日経平均は7月最終週に急落、投資部門別売買状況のデータから、下げを主導した主体を探る。

●海外投資家の先物売りが、裁定買い解消を通じて現物売りに波及、株安は投機主導の可能性。

●海外投資家の現物売買は年初累計で依然買い越し、日本株急落第2波のデータは16日公表。

日経平均は7月最終週に急落、投資部門別売買状況のデータから、下げを主導した主体を探る

日経平均株価は7月の最終週となった第5週(7月29日~8月2日)、8月1日に前日比2.5%、翌2日に同5.8%、それぞれ大きく下落し、市場に動揺が広がりました。このときの状況については、8月2日付レポートで解説しましたが、株安を主導したのは投機筋による先物売りの可能性が高く、詳細は8月8日に日本取引所グループが公表する投資部門別売買状況のデータで確認できるとお伝えしました。

 

そこで今回のレポートでは、8日に発表された投資部門別売買状況のデータを検証し、7月最終週の日本株急落を主導したのは、実際に投機筋による先物売りだったのか否かについて確認します。調査対象とした主な投資主体は、海外投資家、個人、投資信託、事業法人、信託銀行、自己(証券会社の自己勘定)で、それぞれについて7月最終週の売買代金差額をみていきます。

海外投資家の先物売りが、裁定買い解消を通じて現物売りに波及、株安は投機主導の可能性

まず、7月第5週で目立った動きを確認すると、海外投資家が先物を5,105億円売り越すなか、自己がほぼ同額の先物を5,680億円買い越し、現物を4,441億円売り越しました。これは、海外投資家の先物売りが、自己の裁定買い取引の解消(詳細は3月12日付レポート参照)を誘発し、現物に売りが波及したものと考えられます。その他の投資主体は先物を売り越しましたが、金額は1,000億円未満の少額でした。

 

一般に、先物を取引する海外投資家には短期的な視点で売買を行う投機筋などが含まれるとされるため、やはり投機筋の先物売りが一定程度、7月第5週の日本株の下げに影響したと判断されます。なお、6月第4週(6月24日~28日)から7月第5週までの、主な投資主体の売買動向をみると(図表1)、この期間における日経平均の急騰と急落は、改めて投機筋の先物主導による動きと推測されます。

 

[図表1]主な投資主体別の日本株売買動向

外投資家の現物売買は年初累計で依然買い越し、日本株急落第2波のデータは16日公表

次に、現物に目を向けると、逆張り志向の強い個人と投資信託は、それぞれ4,818億円、3,021億円の買い越しとなり、自社株買いとみられる事業法人は1,464億円の買い越し、年金のリバランスと思われる信託銀行は239億円の買い越しでした。ただ、海外投資家は5,524億円と3週連続の売り越しとなり、一般に、現物を取引する海外投資家には中長期的な視点で運用を行う年金などが含まれるとされるため、やや心配な動きではあります。

 

そこで、海外投資家の現物売買差額について、年初からの累計額をみると、足元でやや減少しているものの、依然3.3兆円の買い越しとなっており(図表2)、日本株への投資資金を完全に回収してしまった訳ではありません。なお、7月第5週は日本株急落の第1波で、8月第1週(8月5日~8月9日)にはさらに大きく下げた第2波が発生しましたが、詳細を確認できる投資部門別売買状況のデータは8月16日に公表されます。

 

[図表2]海外投資家の現物累計買い越し額

 

(2024年8月13日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『7月最終週の「日本株急落“第1波”」、その元凶を分析【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>

 

注目のセミナー情報

【国内不動産】12月25日(水)開催
フルローン×1都3県・駅チカ物件で利回り7%超×買戻し特約で投資家殺到!
「カインドネスシリーズ」年末特別説明会

 

​​【海外不動産】12月26日(木)開催
10年間「年10%」の利回り保証・Wyndham最上位クラス
「DOLCE」第一期募集開始!

 

​​【事業投資】12月26日(木)開催
年利20%の不動産投資の感覚で新しい収益の柱を構築
ブルーオーシャン戦略で急拡大!
いま大注目のFCビジネス「SOELU」の全貌

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧