親族が集まる夏休み、親きょうだいで相続の相談をする人も
いよいよ夏休みも本番。すでに郷里へ帰省している人も多いだろう。近年では「相続」への意識が高まりつつあるが、今回の帰省で、親きょうだいたちを腹を割って相続に関する話をしようと考えている人もいるのではないだろうか。
しかし、相続は「親が亡くなったあと」発生するもの。親自身が前向きならいいが、そうでない場合、子どもの側から切り出すのはなかなか注意が必要だ。
株式会社LIFULL seniorが親の死を経験した方に実施した「親と話したい“親の今後”にまつわる話題」に関する調査によると、97.3%が「生前、親の今後に関する会話が不十分であった」と回答。
近しい間柄だからこそ、話題にするのは難しい話なのかもしれない。
長男家族からの同居の提案に、父は「迷惑をかけたくない」
40代のある男性は、去年亡くした父親のことを回想してくれた。
「私の郷里は茨城県です。私は姉と2人きょうだいですが、いずれも進学で郷里を離れています。姉は結婚して大阪へ、私はずっと仕事の関係で東京です。両親は子どもが巣立ってから20年以上2人暮らしだったのですが、5年前に母が亡くなりまして…」
ひとり残された実家の父親を心配した男性とその家族は、何度か同居を持ちかけたというが、父親は「環境が変わるのは不安」「迷惑をかけたくない」と遠慮した。
男性も姉も、そんな父親に折を見て連絡を取っていたが、仕事や子どものことで忙しく、帰省する機会はなかなか持てなかった。
「ところがある日、姉から〈お父さんが救急搬送された〉と電話が入ったのです」
買い物に出た先で倒れ、救急病院に搬送されたという。
「心筋梗塞で、残念ながら助かりませんでした。車でスグなのに、どうしてまめに様子を見に行かなかったのだろう、電話の声だけで大丈夫だと思ってしまったのだろう…と後悔ばかりで…」
ごく近しい親族だけで家族葬をすませると、男性は姉と今後のことを話し合った。
「姉も私も、すでに自分の生活拠点ができていて、住まいもある状態です。実家に帰ることはありませんので、父の一周忌を待って売却しようと決めました」
男性の父親は、地元企業に勤務するサラリーマン。堅実な生活を送っており、資産状況はプラスだったが、相続税がかかるほどの財産ではなかった。
地方都市ではあるものの、土地の形状もよく、駅も近いことから、探せば買い手は見つかりそうだった。