「チェリーピッキング」に惑わされてしまう現実
こういう「都合のいい事実」だけを並べて、自らの論拠の正当性を主張する方法を「チェリーピッキング」と言います。これは数多くのチェリーの中から、食べたいものだけを取る(ピッキングする)イメージから名づけられた用語です。
たとえば「酒飲みは甘いものが嫌いだ。酒好きのAさんも、Bさんも、Cさんも、Dさんも、Eさんもみんな甘いものが嫌い。だから、あなたの知り合いの酒好きFさんも、甘いものは嫌いだ」と言われたとします。しかし、A~Eさんはチェリーピッキングだとどうでしょう? Fさんが必ずしも甘いものが嫌いとは言えません。
こんな簡単な例と異なり、ビジネスの現場では事情はさらに複雑です。主張したい事柄に対して、存在する「事実」というのは山ほどあります。仮に、民泊ビジネスに関する「確かな事実」が100個あったとしましょう。人を陥れようと、都合のいい事実を5つだけ取り上げて組み合わせることも可能です。すると(一応は)「確かな事実」にもとづくセールスができてしまいます。
しかし、実際には、100分の5にすぎない事実です。京都市内であおられて、民泊ビジネスに参入した事業者は、たくさん撤退や破産しています。民泊ビジネスを例に出すと、よく「いや、それは誰も予想できなかった新型コロナウイルス感染拡大のせいでしょ」と言う人がいます。
しかし、それも数多くある事実のうちの一つにすぎません。実際、業界では随分と早くから、京都市内での民泊ビジネスが過剰供給により破綻すると言われていました。あおっている内容一つ一つに論理矛盾があるからです。