(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活に不安を抱え、定年後も働く人が増えています。しかし、老後資金を増やすための仕事が、かえって年金を減らすことも……。定年後も働くことを決意したAさんの事例をもとに、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。

Aさんの年金が予想よりも7万円少なかった理由

【在職老齢年金とは】

60歳以降に在職(厚生年金保険に加入)しながら受ける老齢厚生年金。賃金と年金額に応じて、年金額の一部または全部が支給停止される場合があります。

 

賃金と年金額の合計額が50万円(※)を超える場合、50万円を超えた金額の半分が年金額より支給停止されます(ただし、老齢基礎年金は全額支給)。

※ 令和6年度の支給停止調整額

参考:在職老齢年金|日本年金機構

 

つまり、給与収入があると、年金が減額されたり、受け取れなかったりするのです。

 

在職老齢年金の計算の対象となる給与は、1ヵ月あたりの賞与額(1年間の賞与を12で割った金額)を含み、税金等を控除する前の額で計算されます。

 

Aさんの場合は給与40万円(月額)、賞与120万円(年間)、老齢厚生年金14万円(月額)、老齢基礎年金6万円(月額)です。

 

給与と老齢厚生年金の合計が1ヵ月あたり64万円で、支給停止調整額である50万円を14万円超えてしまっています。

 

そのため、支給される老齢厚生年金から、14万円の2分の1の額である7万円が支給停止されます。この支給停止された年金は繰り延べられるわけではありません。

 

これによりAさんは、毎月7万円を損している気分になり、すっきりしない日々を過ごしているとのことでした。

Aさんがいまからできること

Aさんは、年金が減額したことで金銭的に困窮しているわけではありません。しかし、働いているからといって本来もらえるはずの年金がもらえないのは、なんだか不公平だと感じているようです。

 

そんなAさんに対して、筆者は次のような情報を伝えました。

 

①年金繰下げ受給

繰下げ受給制度は、65歳から老齢年金を受け取らずに、受給開始年齢を遅らせることにより将来の年金額を増額させる制度です。増額率は、66歳から70歳までの間で1ヵ月遅らせるごとに、0.7%ずつ増えていきます。そのため60ヵ月繰下げすると、将来の年金を42%増額することができるのです。

 

ただし「在職老齢年金によって年金の支給が調整されている人が、老齢厚生年金を繰下げる場合」には、65歳時点の年金額の全額ではなく、調整後の額が増額の対象となります。

 

このことを知らないと、いざ繰下げ受給の請求をしたときに「思っていたより増額されていない」ということがあるため注意しておきましょう。ただし、老齢基礎年金は在職老齢年金の対象外であり、支給を停止されることはありません。

 

そのため、Aさんについては次の②③の対策がおすすめです。

 

次ページAさんのような人におすすめな2つの対策とは?

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