両親への状況説明
当日、少し緊張をしたAさんと私で、Aさんのご実家へ向かいました。その道中も「このアパートは親父の名義です」とか「ここの畑も親父の名義のはずです」など案内をしていただき、いよいよ到着しました。
ご両親は70歳後半ですが、お元気そうな様子でした。私を見て「この人は?」と戸惑いの様子を見せられたので、「実はAさんの会社経営についてアドバイスをさせてもらっている保険屋です。今日は会社の現状を報告させて頂くためにご一緒させていただきました」。名刺を差し出すと、怪訝な表情をしながらも「そうですか。それはご苦労様です」と居間に通していただきました。
お母様が淹れたお茶を置いて、それに口をつけたところで、事前の打ち合わせ通りにAさんから「おかげ様で最近になって、なんとかやれるようになりました」と切り出してもらいました。Aさんのお話をお父様はじっと黙って、お母様は心配そうに聞かれていましたのが印象的でした。
話し終えたAさんがカバンから決算資料と月次試算表を「今はこんな感じ」と照れ臭そうに出しました。お父様は資産家で個人事業として不動産事業を行なっているので、多少なりとも決算資料はご理解できる様子で、ざっと一通り目を通して「そうか……でもまだまだ厳しそうやな」とだけおっしゃられました。
少し重たい空気になったので、私があとを引き継いで決算書と月次試算表をゆっくりと丁寧に説明し、見た目の数字ほどは悪くない状況をお伝えしました。お父様はいくつか質問を交え、頷きながらじっくりと聞いていました。そして、それなりにご安心をされた様子で、「まぁ景気はよくないけど、このまましっかり頑張れよ」とだけおっしゃいました。