今回は、がん治療を大きく変える「分子標的薬」の効果と課題を見ていきます。※本連載は、生命保険の専門家であり、自身も医師として活躍する佐々木光信氏の著書、『比較検証、がん保険 』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、近年長足の進歩を遂げている「がん医療」の種類と変遷を紹介します。

分子標的薬とは、がん細胞を分子レベルで攻撃する薬剤

分子標的薬の出現で「がん治療」が大きく変化しています。今回は、分子標的薬について少し解説しておきましょう。

 

「細胞傷害性抗がん剤(従来の抗がん剤)」と異なり、癌細胞に特異的な分子レベルでの異常を標的としてがんを治療することを分子標的治療といい、分子標的薬とはこれに使用する薬剤です。

 

がんの増殖・浸潤・転移などのがんの特性を規定する分子などを標的とし(以下図表1を参照)、さらに血管の新生を阻害する薬剤も創薬されています。従来の抗がん剤との比較を(以下図表2を参照)にまとめています。

 

[図表1]分子標的薬の標的ポイント

 

[図表2]従来の抗がん剤との比較

「非常に高額」かつ「治療期間の長さ」が課題

近年発売されている新薬は非常に高額です。様々なレジメン(※)があるので単純比較できませんが、従来の抗がん剤と比較すると、注射剤1瓶や内服薬1錠の価格が従来の8倍から9倍にもなっています。

 

これは、患者の特性に合わせたほぼオーダーメイドの治療薬なので、全ての患者に投与できるわけではなく、薬剤の価格は必然的に高騰します。

 

※レジメンとは、国立がんセンター中央病院薬剤部によると「抗がん剤、点滴、支持療法薬(制吐剤など)の投与に関する時系列的な治療計画」をいう。

 

化学療法は、時に治療期間が長くなります。身体的な副作用以外に高額な費用負担という経済的副作用があり、臨床医の治療選択にも影響します。経済的副作用への対処として民間保険が有用です(以下図表3を参照)。

 

[図表3]抗がん剤の経済的毒性(Financial Toxity)

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    比較検証、がん保険

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    佐々木 光信

    保険毎日新聞社

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