今回は、大きく変わろうとしている「がん治療」の現況を見ていきます。※本連載は、生命保険の専門家であり、自身も医師として活躍する佐々木光信氏の著書、『比較検証、がん保険 』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、近年長足の進歩を遂げている「がん医療」の種類と変遷を紹介します。
「がんは切るもの」という時代は終わりつつある!?
最近のがん治療関連の学会は、ほんの数年前に比べ大きく様変わりしています。あたかも、がん治療の主役が交代したかのように薬剤治療の発表会場に聴衆があふれかえるようになっています。
また、以前は参加者が少なかった免疫療法の研究発表の場にも多くの医療関係者が集まり、会場に入れないような状況になっています。
このような状況の背景には、遺伝子検査技術の進展により個別化医療を牽引する抗がん剤の普及と、免疫療法の登場があるようです。
現時点でも外科的治療や放射線治療といった局在的な腫瘍の治療に関する重要性に変わりはないですが、今後は「早期がん」にも抗がん剤治療を選択するなど治療に対する考えが根底から変化しそうです。
以前は匙を投げていた「進行がん」の治療にも光が
部位別に、悪性新生物の診療ガイドラインが公表され、診療医の治療上のバイブルとして利用されていますが、基本的にがんの部位、がんの進行度(ステージ別)に合わせて治療方法が組み立てられています。
しかし、現在このような治療の骨格が変化しそうな気配すら感じる状況です。既に、乳癌治療の重鎮がステージ別治療の時代は終わったと発言するまでになっています。
早期のがんに対しても集学的な治療が必要で、匙を投げていた進行がんに対しても治療が行えるようになってきたということで、まさにがん治療におけるパラダイムシフトが進捗しつつあることの証拠だと言えるでしょう。
[図表]治療のパラダイムシフト
株式会社保険医学総合研究所
代表取締役社長
慶応義塾大学医学部卒後、膀胱癌研究で学位取得、三四会賞受賞。
医療機関勤務を経て、千代田生命保険相互会社医事調査課長、医務部長。2001年アメリカンファミリー生命保険会社で医務部部長、チーフメディカルディレクターを経て独立、現職。
保険医学を中心とした危険選択(保険引受、保険支払)実務、商品開発実務に30年以上従事、FPへの情報提供や保険医学・営業教育に関する講演活動を行う。
医学の進歩と生命保険の関係や医療介護保険制度と民間保険を中心に研究活動に取り組み、この分野の論文など研究成果多数。保険にテレビ電話を使用した危険選択手法を導入、経済誌「フィナンシャルタイムス」やNHK「クローズアップ現代」などで取り上げられる。
日本保険医学会評議員、生命保険協会医務部会委員など歴任、現在インシュアランス誌論説委員。
医師、医学博士、介護支援専門員資格、日本保険医学会認定医、日本医師会認定産業医資格で、所属学会は、日本癌治療学会、日本泌尿器科学会、日本保険学会、日本保険医学会、日本生命倫理学会等。
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