今回は、「がんの化学療法」の現状を見ていきます。※本連載は、生命保険の専門家であり、自身も医師として活躍する佐々木光信氏の著書、『比較検証、がん保険 』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、近年長足の進歩を遂げている「がん医療」の種類と変遷を紹介します。
抗がん剤の新しい主役となる「分子標的薬」
がんの化学療法は、専門的には「化学物質を用いて病原性微生物や悪性腫瘍細胞の宿主生体内での発育を抑制あるいは死滅させる療法、一般的には悪性腫瘍治療時に使われることが多い」と解説されます。抗がん剤以外にも細菌用の抗生物質も含まれます。
<抗がん剤の種類>
①従来の細胞傷害性抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)
●細胞の分裂サイクルへの障害、分裂増殖する健康な細胞にも毒性
②分子標的薬
●新しい抗がん剤の主役で、これまでと異なる副作用も見られ、かつ非常に高額
●遺伝子検査などのコンパニオン診断(投与する抗がん剤の治療効果を予め確認する診断検査)による個別化医療の中心をなしている
抗がん剤治療患者の半数は「外来通院治療」に
分子標的薬の登場で化学療法治療は大きく変わりつつあり、今後のがん治療の中心になると予想されています(連載第1回参照)。
現在では、進行がんの患者にとって必須の治療法であり、副作用を抑える「支持療法」も進歩しています。その影響もあり、外来で抗がん剤投与が行われる外来化学療法も普及しています。すでに抗がん剤治療患者の半数は外来通院治療の時代に突入しています。
[図表1]がん医療の選択肢
[図表2]治療の比較
最大の問題は、抗がん剤の高額化で、内服薬でも非常に高額な薬剤が出現しています。医療における経済格差の問題の象徴です(下記図表3参照)。
[図表3]抗がん剤治療の環境
株式会社保険医学総合研究所
代表取締役社長
慶応義塾大学医学部卒後、膀胱癌研究で学位取得、三四会賞受賞。
医療機関勤務を経て、千代田生命保険相互会社医事調査課長、医務部長。2001年アメリカンファミリー生命保険会社で医務部部長、チーフメディカルディレクターを経て独立、現職。
保険医学を中心とした危険選択(保険引受、保険支払)実務、商品開発実務に30年以上従事、FPへの情報提供や保険医学・営業教育に関する講演活動を行う。
医学の進歩と生命保険の関係や医療介護保険制度と民間保険を中心に研究活動に取り組み、この分野の論文など研究成果多数。保険にテレビ電話を使用した危険選択手法を導入、経済誌「フィナンシャルタイムス」やNHK「クローズアップ現代」などで取り上げられる。
日本保険医学会評議員、生命保険協会医務部会委員など歴任、現在インシュアランス誌論説委員。
医師、医学博士、介護支援専門員資格、日本保険医学会認定医、日本医師会認定産業医資格で、所属学会は、日本癌治療学会、日本泌尿器科学会、日本保険学会、日本保険医学会、日本生命倫理学会等。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載保険加入前に知っておきたい「がん治療」の基礎知識