がん患者の25%が受けている「放射線治療」
近年、医療用の放射線技術は大きな進歩を遂げ、患者の期待も高くなっています。テレビでおなじみの著名人が、「頭頸部癌」「喉頭癌」の治療で機能温存が可能な点を理由に放射線治療を選択したという治療後の報道も聞かれました。もし放射線治療技術がなければ、多くの患者の日常生活は非常に低質で苛酷なものになっていたと思われます。
以前は、手術不能例や再発がんなど外科から転科して放射線科を受診することがほとんどで、放射線治療は治療の主役ではありませんでした。
ところが、最近では、がん患者の25%が放射線治療を受ける時代になり、がん治療は様変わりしています。さらに、放射線治療装置にも進歩が見られ新しい治療機器がどんどん導入されています(以下の図表参照)。
[図表]主要な放射線治療
腫瘍だけを「ピンポイント」で狙う技術が大きく発達
放射線治療では、腫瘍以外の正常組織に放射線が照射されることによる副作用(有害事象)で後遺症がみられ、治療後の生活の質が悪化することが知られています。したがって、放射線治療の進歩は、いかに効率よく腫瘍を治療し、後遺症を少なくできるか、照射装置の開発と照射技術の改良の歴史でした。
また、放射線とは別に、皆さんご存知の粒子線治療装置も新しい治療装置のひとつです。粒子線は、先進医療で認められた高額な医療として注目を浴びました。
その間にも放射線の治療技術は進歩し、特に腫瘍だけをターゲットにして周囲の正常組織への照射量を極力減らす「高精度放射線治療」が長足の進歩を遂げたのです。
腫瘍はきれいな球形をしているわけではなく、不整形の病巣です。これに対して腫瘍の形に合わせた照射方法が高精度放射線治療で、三次元の照射方法と言えるわけです。粒子線に先駆けて保険適用になっており、粒子線より遥かに安価な治療方法として利用できるようになっています。
また最近では、さらに技術が進歩して、四次元照射である動体追尾型放射線治療装置も導入されるようになり、放射線照射時間中の体の動き(どうしても治療中に呼吸性移動があるため)に合わせた放射線照射が可能になっています。
これ以外にも病巣をピンポイントで治療する定位放射線治療の装置としてガンマナイフやサイバーナイフといった治療装置も利用されるようになっています。
今回説明した放射線技術は、体の外から治療する体外照射治療ですが、放射性物質を病巣や周囲の組織に埋め込み、組織の中から放射線を照射する組織内照射(密封小線源療法)も前立腺癌や舌癌、子宮癌などの部位で利用されています。
さらに、骨転移した「がん」を原因とする「がん性疼痛」にも放射線の利用が進んでいます。従来は、放射線治療と言えばがんの根治を目指す、手術の代替としての治療法でしたが、症状緩和にも使用されるようになっており、治療の適応の範囲も広がっているのです。
従来、民間生命保険の給付金は、手術給付金の一環として通常の体外照射による、放射線量50グレイ(Gy)以上の場合に給付金が支払われる商品が標準でしたが、治療方法が進歩し現状に合わなくなっています。
また手術給付の一部として給付されると、ユーザーには放射線の給付金が付加された商品なのか否かがわかりにくいという問題がありました。