●今会合で追加利上げの見方も一部で強まっているが弊社は引き続き10月の利上げ実施を予想。
●国債の買い入れは2年後に月3兆円程度が市場のコンセンサス、実際の計画もこれに近い内容か。
●利上げなく減額計画と展望レポート想定内なら長期金利と株価は小動き為替はいったん円安か。
今会合で追加利上げの見方も一部で強まっているが弊社は引き続き10月の利上げ実施を予想
日銀は7月30日、31日に金融政策決定会合を開催します。そこで、以下、今会合の注目ポイントについて整理していきます。まず、政策金利について、日銀は現在、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0~0.1%程度としていますが、このところ、政府内から金融正常化を後押しする声が出ており(図表1)、市場の一部では、今会合で追加利上げが行われるとの見方が強まっています。
弊社は引き続き、追加利上げは10月30日、31日の会合で決定されると予想しています。その理由の1つは、実質賃金の伸びが5月まで26ヵ月連続で前年比マイナスとなっており、消費に力強さがみられないことです。ただ、実質賃金の前年比の伸びはこの先、2024春季生活闘争(春闘)の賃上げ効果によって、9月頃までにプラスに転じる可能性が高く、日銀はこれを確認してから利上げの判断を行うと考えています。
国債の買い入れは2年後に月3兆円程度が市場のコンセンサス、実際の計画もこれに近い内容か
また、今会合では、国債買い入れの減額計画が発表されるため、これまでの日銀の慎重な政策運営のスタンスを勘案すると、計画発表後の長期金利の動向をしばらく見極めてから、利上げの議論を進めていく公算が大きいと思われます。次に、その国債買い入れの減額計画について考えていきます。日銀は7月9日、10日に債券市場参加者会合を開催し、そこで寄せられた様々な参加者の意見を踏まえ、減額計画を策定するとみています。
市場では、日銀の国債買い入れ額について、現在の月6兆円程度から2年後に月3兆円程度へ縮小されるとの見方がコンセンサスになっている模様です。複数の報道によれば、日銀もこのような市場のコンセンサスを認識し、違和感はないとしているとのことです。そのため、実際の減額計画が、市場の見方から大きく乖離した内容になる恐れは小さいと考えられます。
利上げなく減額計画と展望レポート想定内なら長期金利と株価は小動き為替はいったん円安か
なお、減額に関するガイダンスの示し方や、残存期間別の進め方は、植田和男総裁が6月に「予見可能な形で減額していく」と述べた通り、市場に減額スケジュールが分かりやすいように示されると思われます。そして、今会合では「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」も公表されます。物価見通しに大きな修正はないとみていますが、金融政策運営に関する「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」との文言の修正有無が注目されます。
今回、利上げ見送りとコンセンサスに近い減額計画は市場のほぼ想定内であり、展望レポートで前述の文言が削除されても、大方が10月利上げの予想であるため、混乱は少ないと考えます。この場合、国内の長期金利と株価は小動き、ドル円は追加利上げの思惑があった分、いったん円安の反応が見込まれます(図表2)。ただ長期的にみて、金融政策の正常化は、緩やかな長期金利の上昇と円安抑制につながり、株価にも好ましいと判断されます。
(2024年7月26日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『7月末の日銀会合、利上げ見送り&減額計画と展望レポートが“想定内”なら「いったん円安」だが【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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