(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦であっても、お互いの心の内を明かせずにいると、「定年退職」は2人の転機となることも。本記事では同じ大企業に勤めていたAさん夫婦の事例とともに、パワーカップルの老後について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

夫からの離婚申し出

そんなAさん夫婦ももうすぐ定年を迎えるころ、Aさんは1つの決断を固めていました。妻は仕事が楽しく、65歳までは継続雇用で、その後も身体が動く限り働き続けたいといっていますが、Aさんは妻から離れて生活したいと退職することを選択します。

 

もともと堅実なAさんは資産形成をしていたため、貯蓄額は退職金あわせて6,000万円になっています。一方、妻は外食も多く、服やバッグなどの新作を見るとすぐに買ってしまうなど散財していたこともあり、退職金があるものの貯蓄はほとんどゼロに近い状態でした。

 

Aさんは退職を機に、妻に離婚を申し出ます。妻は反対しますが、Aさんはずっと我慢してきたのです。妻や周りの人を配慮して、退職したら離婚しようと決めていました。

 

元夫と元妻のそれぞれの離婚後

卒婚という結末を、いったい社内で誰が想定してたでしょうか。Aさんは2人のマンションを出て、東京近郊の小さなマンションを購入し移り住みます。妻は部屋の片づけができずにズルズルと賃貸マンションに住み続け、高い賃貸料を支払い、いままでの生活スタイルを変えることができずにいます。

 

Aさんの老後は投資を続けながら、ボランティア活動をし、安定した老後を過ごしています。「幸せです。やっと自分の人生を歩んでいる気がします」と語るAさん。「でも元妻は……」と続けます。彼女は現状のままでは近い将来、老後破産、貧乏生活を余儀なくされそうです。

 

子どもがいないAさん夫婦なら、もっと早くに離婚できたのかもしれません。しかし、Aさんは、妻の性格や会社の雰囲気を考慮し、我慢することを選択してきたのです。

増える熟年離婚

厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、同居期間別にみた離婚の年次推移から、同居期間が「20年以上」の割合は上昇傾向にあり、2020年には21.5%となっています。同居期間が長いということは、熟年で離婚する人が多いと考えられます。

 

また、日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、年金生活者(職業)の破産は全体の6.69%です。年代別による破産者の数では60歳以上の自己破産は25.72%となっています。

 

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