習近平独裁政権の“悪手”が深刻…中国が「世界の覇権国」から遠ざかったといえるこれだけの理由【経済の専門家が解説】

習近平独裁政権の“悪手”が深刻…中国が「世界の覇権国」から遠ざかったといえるこれだけの理由【経済の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

7月18日まで共和党大会が開催された米国と、同じく7月18日まで三中全会が開かれた中国。世界情勢のカギを握る2国ですが、この日、「米中」の明暗がはっきり分かれたと、経済の専門家で株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。米国好調の理由と中国不調の背景について、それぞれ詳しくみていきましょう。

中国が“問題の先送り”を連発する「2つ」の理由

1990~2003年までの日本における不動産バブル崩壊と不良債権処理の過程では、公的資金注入に対する世論の批判が強く、金融構造改革が遅れ経済の長期停滞につながった。これに対して中国は「独裁国家なのでバブル処理が迅速に行われる」という期待があった。

 

しかし中国は日本どころではない問題の先送りが連発されている。習政権がそうした合理性のない悪手を採り続ける動機はどこにあるのだろうか。2つの理由が考えられる。

 

1.中国の「病状」が深刻

第1に病状が深刻で患者は外科手術に耐えられない、のかもしれない。日本の不動産貸付はピークでGDPの2割程度であった。しかし中国の場合地方政府の別動隊である地方融資平台の債務残高だけでGDP比53%と日本の比ではない。

 

さらに地方政府は高騰した土地利用権を販売することで総収入の4割以上を稼ぎ、固定資産投資や産業補助金の原資としてきた。地価下落を認め土地売却収入が激減すれば、地方財政は成り立たなくなる。日本のバブル期以上に高騰した不動産価格を維持するしかないのだろう。

 

2.共産党体制×資本の規律がなじまない

第2の可能性はそもそも共産党体制が資本の規律となじまないということである。

 

日本の金融改革は、物件のキャッシュフローと資本コストにより公正な不動産価格評価を行うことから始まった。しかし中国には資本コストで投資プロジェクトを評価するという慣習がない。恣意性が当たり前の党主導の行政において、資本の規律に従わせることは無理なのであろう。となるとゾンビを生かし続けるしかない。

活路「新質生産力」は、中国をさらに孤立させる

このように見てくると不動産バブルが慢性疾患化し、患者は緩慢に衰弱し続けるほかはなくなる。ならば中国経済の活路はどこにあるのだろうか。

 

3中全会の答えは、競争力が圧倒的に強いソーラパネル、EVなどのハイテク、グリーン産業等の「新質生産力」で世界市場を圧倒し続けるということである。

 

しかしそれはバイデン政権のみならずトランプ氏も欧州も拒絶する政策である。対中批判が高まり、中国はさらに孤立せざるを得ない。

 

7/18日の二都物語は、米国の圧倒的優位を物語っている。

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2024年7月21日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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